住宅・不動産市場 震災で変わったこと 「安全」と「省エネ」志向が加速
住宅新報 2011年7月12日 号 1面
東日本大震災発生から4カ月。大地震と津波、更に原発事故と電力不足。未曽有の大災害は人々の価値観や暮らし方、更に住宅・不動産市場をも変えたと言われている。東北地方太平洋沿岸から茨城、千葉県に大きな被害をもたらし、首都・東京も震度5強の大きく長い地震動に揺さぶられた。交通は麻痺し帰宅難民が大勢まちにあふれ、計画停電もあった。「3.11」を境に、人々の「安全安心」志向は一層強まったようでもある。住宅・不動産市場での「変わったこと」を探った。マンション
進む『太陽光』
分譲マンションで、各住戸の電力を賄う「戸別太陽光発電システム」を導入する動きが加速している。
7月下旬から、首都圏初となる同システム搭載の分譲マンション「レーベンハイム光が丘公園」(埼玉県和光市、事業主=タカラレーベン)の入居が始まる。
同マンションの販売時期は昨秋で、約2カ月で全戸完売(販売戸数110戸)。東日本大震災による現在の「節電ブーム」下の販売時期ではなかったが、反響が高かったことから太陽光発電の継続した推進を決定できたという。
同社では、横浜市旭区で開発する158戸のマンション「レーベンリヴァーレ横濱鶴ヶ峰ヒルズ」にも導入するほか、埼玉県戸田市のマンション(175戸)への導入も決めた。企業イメージに『太陽光マンション』を加えるべく、今後も積極的に展開していく方針だ。
タカラレーベンのこれらの物件を含め、分譲マンションで戸別太陽光システムを採用しているのは10件に満たない程度だ。ボリュームとしてはまだまだ少ないが、現在、システム導入のトップシェアを確保しているJX日鉱日石エネルギーでは、「5000戸の分譲マンションに対して、導入の商談を進めている最中」という。
特に東日本大震災以降、様々なディベロッパーから問い合わせが急増しているようで、「戸別太陽光発電マンション」が増えるのは間違いない状況だ。中古住宅
『慎重さ』強まる
首都圏の不動産流通市場の成約件数は3月が前年比2割減となった後、徐々に持ち直しつつある。
6月までの状況は「東京湾岸エリアと高額物件の多い都心型店舗を除くと、前年並みの水準に戻してきた」(大手流通)と言われる。
「現状は、まだ先行き不安があるが、それでも実需の動きは底堅く市場の支えになっている。それに対し、投資系や高額物件はまだ慎重な構えが続いている」と分析する。ただ、『買い』需要の分量そのものはまだ戻っていない。
顧客の変化はまず「慎重に」(中堅流通)なったこと。具体的には「成約までの検討期間が長く、しかも専門家の意見を聞いて判断する人が増えてきたようだ」という。
首都圏でも液状化被害が発生したことで、「建物の耐震化はもちろん、地盤や活断層に対する質問が増えた」(別の流通大手)。「その土地は昔どうだったのかと、古地図を調べたり、自治体が出している液状化・ハザードマップなどを基に熱心に聞いてくる人もいる。震災を機に、安全・安心に対するニーズが一層強くなったということではないか」と話す。
震災直後、揺れの大きさや液状化被害などで需要は沿岸部から内陸部へ、超高層からより中低層建物へシフトする動きも伝えられた。
「確かに、一部でそういう現象もあったようだが、大きな流れにはならなかった。マンション建物内での選択はともかく、エリア選択では、現実には沿線・地域内の動きが一番多いのが事実だから」(大手流通)と、そうした動きも落ち着きを取り戻してきたようだ。住宅会社
省エネ技術積極化
震災発生以降、エネルギー問題に関心が集まっている。大手住宅会社は家庭内の省エネ意識を高める新たな機器を投入し始めている。
家庭内のエネルギーを「見える化」。更に、インターネットを使い、データを集めて分析するほか、省エネアドバイスやユーザー同士の交流機能も持たせる研究が盛んだ。
◇
◇
積水化学工業住宅カンパニーは太陽光発電システムによる発電量や家庭内の使用量などを測定・集約するシステム「スマートハイム・ナビ」を開発。今春、同システムを搭載した戸建て住宅を発売した。インターネットでつながったクラウド型のシステムで、エネルギー情報を表示するだけでなく、省エネのコツをメールでアドバイスするサービスも用意する。
ミサワホームはこのほど、家庭内のエネルギー使用状況を表示するモニターに、インターネット回線を使った通信機能を追加した。「enecoco(エネココ)モニター」として発売。8月からは、ユーザー同士が省エネに関する実績や意見を投稿する交流サイト機能もスタートする。
一方、大和ハウス工業とソニーコンピュータサイエンス研究所は、スマートフォンのアプリケーションを使い、ゲーム感覚で家庭内の家電機器を制御する公開実験を行った(13面に関連)。
自宅のテレビやエアコンなどの家電機器がアニメキャラクターとなって、機器のコントロールや省エネアドバイスなどを行う。
(5面に続く)持家志向は?今回の震災は日本人の心に、未来に対する漠とした不安を抱かせる。住宅の所有マインドが、ここしばらく冷え込むことは間違いないだろう。しかし、中・長期的にはどうか。
未来が不安だからこそ、確たる資産を持ちたいという心理も働くのではないか。株はもちろん、世界の紙幣でさえ、アメリカ経済が衰退しドルが世界の基軸通貨でなくなればどうなることか。
日本では今後、少子高齢化で不動産価格は下がるという見方が一般的だが、グローバルに見れば、世界の人口は増え続けている。持家志向は根強く残る。













