紙上ブログ 悪徳不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 第111回 坂口有吉
住宅新報 2011年7月26日 号 5面
「生活苦にあってもこの言葉」
当初の条件通りに契約
以前、当社の管理物件でない物件で、ある住宅メーカーから滞納家賃の取り立てを頼まれた。本人に会ってみると、結構、真面目な人柄のようで、話していて悪質な滞納者とは思えなかった。ご主人はおらず、大学生と高校生の息子3人を抱えてパートを掛け持ちし、朝から晩まで働いていて、それでも生活に追われて家賃にはとても追いつかず、半年分も家賃が滞っていた。
私は強く督促しないで、1年ほど掛けてゆっくり完済してもらったのだが、もちろん、その間も家主さんからは「どうなっているか」と矢の催促が入る。私は上手く時間稼ぎをして、入居者に今以上の無理をさせないようにしていた。当然のことながら、不誠実な滞納者なら猶予を与えたりはしないが、強く言ったなら出て行くしかなくなる。本人は見せ掛けでなく、本当に責任を感じて努力をしていたのだ。息子たちが独立
あれから10年経って、長男の息子さんが部屋探しをすることになった。次男が先に結婚して出ることになり、それを機に長男も独立することになった。これからは息子さんからの家賃補助がなくなるから、家賃は母親1人で払っていかなければならない。当然に母親も今の部屋を出ることになる。それで先ず長男に適当な部屋を紹介して「この部屋は当社が管理している部屋で、今は礼金1敷金1で募集していますが、家主さんにお願いして礼金をゼロにしてもらいましょう。家主さんは快く受けてくださいますよ」と言うと…、「それはいけません。お借りするなら最初の条件で契約させてもらいます」とのこと。言ったモン勝ち
カネが無いわけでもないのに「ゼロゼロにならないの?」と簡単に要求する客は多いが、生活が苦しくても相手のことを考えてくれる。そういう客は最近では少なくなった。昨今は借手市場なんだから何でも言ったモン勝ち、あれこれ交渉して何が悪いのか!、と思っている輩ばかりである。
その母親は相談事で当社を訪れる際、何度も辞退しているのに必ず缶ビールを6本ぶら提げてやってくる。家主さんの褌(ふんどし)だけを当てにして相撲をとるわけにもいかないので、何かでお役に立たせていただこう、と思っている。(坂口有吉不動産・社長)













