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スタンダード会員限定高まるリスク・未曽有の不況 転機の不動産業(上)活力奪う怖れも 強まる法規制

住宅新報 2009年2月10日 号 1面

 不動産業のリスクが高まっている。判例での瑕疵担保責任強化の動き、消費者契約法による訴訟増大など法律環境は一段と厳しさを増している。一方、高齢化と人口減、単身世帯の増加など激変する市場への対応を間違えれば企業の存続が危うい。それに加え、米国発の世界同時不況が重くのしかかる。未曾有の危機をどう乗り切るのか。賃貸仲介から都市開発まで幅広い業態を持つ不動産業は、その担い手論も含め、大きな転機を迎えている。消費者保護で訴訟増加

 不動産訴訟に詳しい弁護士の江口正夫氏は、不動産業の法律リスクが高まっている理由について「消費者保護強化の動きが背景にある」と指摘する。その象徴が消費者契約法だ。

 同法は01年4月に施行された。事業者と消費者(個人)間の契約が対象となる。たとえば法施行後に締結、または更新された賃貸借契約に適用される。

 ポイントは同法第10条。「民法の基本原則に反し、消費者の利益を一方的に害する条項は無効」としている。この条項に基づき、早くも03年には入居の長短にかかわらず一律に保証金を差し引く「敷き引き特約」を無効とする判決(大阪簡裁)が出された。

 04年以降は通常損耗分の原状回復費用を賃借人に負担させるため敷金から差し引く特約についても無効判決が相次ぐことになる(京都地裁など)。特別損耗以外は敷金から控除できないとしている民法の原則と比べ、消費者の利益が害されているというわけだ。

 退去時に家主が賃借人に原状回復費用として負担を求めることができるのは、いまや実務的には入居者の故意過失による破損部分だけになったと言えるだろう。問題は、こうした消費者保護の視点を強める法律環境に業界や市場の実態が追いついていないことだ。

 業界側の対応として最近は、敷金の代わりに一定額(賃料の2-3カ月分程度)を「定額補修分担金」として受領しておく契約形態が増えている。これは、原状回復に要する費用の金額に関係なく、あらかじめその一部分を入居者が支払うもので、退去時にその返還を求めることはできない。定額のため、トラブルになりにくいという効果を期待している。

 しかし、これについても訴訟が起こされ、昨年同じ京都地裁で相反する判決が出されている。分担金の多寡によって、消費者の利益が一方的に害されるかどうかの判断が分かれたためだ。従って法律上の決着はついていないわけだが、こうした賃貸借契約をめぐる訴訟が増大していくこと自体、業界の危機を増幅させることになる。

 前出の江口弁護士は「今後は更新料、礼金についても訴訟が増えていくだろう」と警告する。最高裁の判断を仰ぐまで訴訟を続けていくことが賃貸業界に対する国民の信頼につながるのか、それでも行き過ぎる消費者保護と見て対決すべきなのか、業界自身が難しい判断を迫られている。消費生活用品安全法に留意

 不動産取引に際しての法律規制は強まる一方だ。不動産売買時の重要事項説明項目である「法令上の制限」で、現在対象となっている法律の数は49本もある。昨年11月4日に施行された「歴史まちづくり法」が新たに加えられている。

 今年4月1日には消費生活用製品安全法が改正され、「長期使用製品安全点検制度」が創設される。これに伴い、宅地建物取引業者が「特定保守製品取引事業者」となる場合には、買主に対し一定の事項を説明する義務が発生するので注意が必要だ。

 具体的には、都市ガス用瞬間湯沸器、石油温風暖房機など9品目(別掲表・住宅新報本紙に掲載・参照)が付属する建物の売主は買主に対し、その引き渡し時に製品に同梱されている「所有者票」を示して次の4項目を説明しなければならない。

 (1)特定保守製品は経年劣化により危害を及ぼす恐れが多く、適切な保守がなされる必要がある(2)同製品の所有者は消費生活用品安全法上の点検が求められている(3)同所有者は特定製造業者などに対して所有者情報を提供する責務があり、提供すると点検時期に点検通知がある(4)売主が建物の買主から記入された所有者票の返送代行を依頼された場合には製造業者に速やかに提供すること。

 小型湯沸器に係る死亡事故が相次いだため保守が難しい製品は、製造業者が常に所有者を把握できるようにしておくのが目的だ。なお、こうした建物の売買仲介を行う事業者は法律上「関連事業者」となり、建物の設備表に特定保守製品に関する記載を売主に求め、制度が円滑に進むよう努めなければならない。重くなる瑕疵担保責任

 判例上、売主の瑕疵担保責任を強く求める傾向が強まっている中、近年にわかに土壌汚染リスクが顕在化してきた。そもそも、土壌汚染は外見上明らかではなく、調査にも相当な手間と費用を要するため、発覚した場合には裁判所が「隠れた瑕疵」と判断する確率が高い。

 さまざまな瑕疵があるなか、ここにきて土壌汚染リスクが注目され始めた理由は、損害賠償金額が極めて高額になる可能性が高いからだ。汚染の原因となっている有害物質を除去し、土地を浄化するためには億単位の費用がかかることもめずらしくない。

 不動産鑑定評価で汚染された土地を評価する場合には、汚染されていないと仮定して評価した価格から、汚染物質を取り除いて土地を浄化するのに必要な金額を引くことになっている。「裁判所はこの鑑定理論に基づいて損害賠償額を算定するようになった」(江口正夫弁護士)というから土壌汚染には留意する必要がある。地方都市などでは除却費用が売却価格を上回ることもある。

 この土壌汚染対策法の改正案が近く国会に提出される予定だ。汚染調査の実態はこれまで、同法に基づく調査事例よりも自主的な調査の方が多いなど法規制の実用性が問題となっている。自主的調査で判明した汚染土壌が適正処理されているかどうかのチェックもなされていない。

 そこで、自主的調査についても土対法に基づく調査とみなすための規定や、一定規模以上の土地開発には調査を義務付けることなどが柱となる。汚染物の処理方法についても明確化するなど規制強化の改正となる。

 

 

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 このほか、今年10月からは「瑕疵担保履行責任確保法」が本格施行される。新築住宅の売主となる宅建業者と、請負人となる建築業者すべてに瑕疵の補修に充てる資金確保(保険加入か供託)が義務付けられる。

 具体的にはたとえ1戸でも新築住宅を供給しようとする事業者は最低2000万円の費用が必要になる。規制緩和の流れが定着してきた近年では最大規模の規制強化となる。

 土地に対する土壌汚染法強化は資産価値の下落につながる可能性が高い。瑕疵担保履行法による業者のコスト負担増は住宅販売価格に転嫁され売れ行きを悪化させる懸念もある。

 また、不動産を取り巻く法律環境があまりに複雑化していくと、商品開発など民間企業の創意工夫に向けるエネルギーを減退しかねない。

 法律リスクに効率的に対応する社内体制の整備など、不動産業の新たな構築が迫られている。

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