大震災を乗り越えよう 「3.11後の選択」 再起・復興を期して<10>
住宅新報 2011年6月14日 号 1面
増える高校生の転学
奪われる福島県の未来
5月9日。小中学校の始業式に2週間以上遅れて、福島県内の避難指定区域の8つの高校の授業が再開された(一部9日以降)。
高校の授業も「サテライト方式」が採用された。小中学校と違うのは、1校に対して複数のサテライト校があることだ。県教育委員会は県内を5つの地区に分け、原則1地区に1つの「サテライト協力校」を置いた。サテライト校の苦労
5つの区域に避難している生徒は、避難場所から最寄りのサテライト協力校に通う。
通学に必要な交通費は県が負担するほか、鉄道・バスなどの公共交通が復旧していない区域ではスクールバスを走らせるなどして、生徒、親の負担の軽減を図っているが、現場の苦労は計り知れない。
まず教師のやりくりが追いつかない。5カ所にサテライトがあるのは1校のみで、大半が2、3校に留まっているが、それでも授業のたびにサテライト校間を1時間以上をかけ移動するケースや、他校の教師に授業を委託するケースがある。小高商業では、サテライト校の教室が足りず、同じ教室で2つの学科の授業を行う。一方、相馬農業のように1つに集約できた先が普通高校であるため、授業内容が大幅に制限を受けるケースもある。実習は場所と設備がそろわないと実施できない。
遠いサテライト校への通学を諦め、避難場所近くの高校へ転学した生徒も多い。転学は試験を受けて合格する必要がある。県教育委員会は「弾力的に扱う」としているが、生徒に精神的プレッシャーがかかる。
転学先は県内だけはない。県外に避難した生徒も多かった。各高校とも生徒数は4-5割減、中には3分の1まで減った高校もある。
特に普通科の場合は、「大学受験を考えた3年生を中心に東京や千葉など首都圏の高校に転学する例が多い」(南相馬市教育関係者)。よりよい環境で勉強に専念したいと思うのは、当然のことだ。
文科省の調査によると、県外に転入学した小中高校生は1万5471人に上り(5月1日)、同じ被災県である宮城県の3980人、岩手県の969人に比べ圧倒的で、震災直後から増え続けている。若い教員を採用せよ
おそらく今後もこうした生徒の流出は続くだろう。いったん転出した生徒が戻ってくる保障はない。子供たちが離れていくことは、すなわち福島県の未来が奪われていくことに等しい。だが、県の対応をみている限り、その未来を奪い返す姿勢は感じられない。
福島大学災害復興研究所の丹波史紀准教授は、福島県が来年度の教員採用を中止したことを憂いる。
「生徒が県外に出て、減っていることがその理由ですが、これは『福島県は今後、教員を育成し、子供たちを育て、未来を築いていくことを放棄した』というメッセージに等しい。ここは、歯を食いしばってでも若い教員を採用し、県外の学校に派遣して、経験を積ませるべき」
県の方向性が見えない。
(エディトリアルワークス・佐藤
聡)













