片付けられない人のための20のこと 第13回 極意は「前後裁断あり」
住宅新報 2011年5月3日 号 9面
いたって元気で、写真が趣味で世界中の観光地を撮影して回っている後藤静香さん、83歳。若い頃は小さな会社を切り回し、「ワーキング・レディ」の草分け的な人だったと聞いています。会社を息子さんに譲ったものの、いつまでも経営者のつもりで口を出すため、周りからひんしゅくを買っています。ご本人は気にしない性質のようです。○現役時代の栄光
「頭の回転がよく、よく気のつく人」という評判ですが、自宅を見た人は、その言葉が信じられなくなります。5年前、ご主人を亡くしたのをきっかけに、息子さん一家との2世帯住宅に改造しました。ですが、静香さんは、いちども息子さん一家を自分の部屋に入れたことがないのです。
「ゴミ屋敷かもしれません?」と、お嫁さんから依頼を受け、私は静香さんを訪ねました。
「息子には内緒よ」という約束で、お部屋を見て言葉が出ませんでした。「ゴミ屋敷」ではありませんが、まるで倉庫のように部屋がモノにあふれています。会社を切り回していた「ワーキング・レディ」がなぜここまで?
私は一つ一つモノを確認しました。贈答品は30年前のものから山積みです。賞味期限の切れた食材、流行遅れの洋服や靴…。
「捨てたくないの」
静香さんは、「捨てる」ことは罪悪という時代に育っています。包装紙一枚でも残しておくのです。「私にとって最も大切なのは、過去の栄光」。静香さんは、いまも現役時代が忘れられません。
私は、最初に、溜まったモノを時代別に仕分けました。静香さんの「ワーキング・レディ」時代、次にリタイア後の海外旅行三昧の時代。そして「今からの生活時代」の3つに。過去と現在を自由に行き来することが出来る空間が生まれてきました。○風水の考え方も
「こうして見ると、私はずいぶん長い時代を生きてきたんだね」と感慨に耽りながら、「これは要らないわ」と、モノを捨て始めました。「不要なモノを捨てると、幸運が舞い込んでくるのよ」。これは風水という中国の古くから伝わった考え方だそうです。
「過去のことは過去のこととして、きっぱりと割り切って生きないと明日がないわね」。「片づけ」で最も大切な考え方を、静香さんはたったの3日間で習得してしまいました。
それから3カ月ほどたって、静香さんは私に、自身が撮影したお寺の写真で作った絵ハガキを送ってくれました。
「前後裁断あり」と、メモがありました。調べてみると、仏教用語で「前(過去)のことは気にせず、いまに集中すること」とありました。まさに「お片づけの極意」のように、私の心の中に刻みこみました。













