片付けられない人のための20のこと 第14回 片付けの「三種の神器」
住宅新報 2011年5月17日 号 11面
都内に長く住む水谷修さん(82、仮名)は、同年代の奥様と2人のマンション暮らしが30年続いています。8年前にリタイアした夫婦は、料理をしなくなったからとキッチンをリフォームしました。それから老後を楽しむように、趣味に精を出しています。「父のアトリエを整理して欲しい」と2人の親孝行な息子さんから依頼がありました。○アトリエが生活の場
部屋は陽当たりがよく真冬の寒い日の夕暮れでも暖房が要らないほどです。ご夫婦から8年間の楽しい日々のことを聞き、時間がたつのを忘れるほどでした。
アトリエは長男のお嫁さんが時々掃除に来ていて、一見すると片づいていますが、4.5畳の部屋いっぱいに水谷さんの作品が積み上げられています。絵の片付けは大きさや仕上がりの違いで、他人には任せられない領分があり、乱雑なまま放置されています。
更に、水谷さんは絵を描き始めると部屋に篭もりきりで、アトリエが生活の場となり食事の後や着替え、更に寝床などが敷き放しになっていました。
「押入れを取り払って、部屋の空間スペースを広くしましょうか」と、私は提案しました。
「広くなって、手が届かなくなると困る」と、水谷さんは、すべてが手の届く位置になるように希望しました。その希望を取り入れ、壁いっぱいを収納スペースに、部屋の真ん中にいて手を伸ばせば、なんでも届くように設計しました。問題は片づけです。
「思い出があるから、捨てては困る」という水谷さんに、私は「片づけの三種の神器」とも言うべき、デジカメ、メジャー、そして何でも入る大きな袋を取り出しました。作品をすべてデジカメに撮り、メジャーでサイズを測り、すぐに使わないモノは大きめの袋に詰め込んで、空間を作り出しました。
「居ながらにして、生活のすべてに行き届く」と水谷さんは満足してくれました。そして、大きめの「何でも袋」の中身を時間をかけて、じっくりと仕分けをして、要らないモノを捨てるという作業に取り掛かりました。○迷ったら「何でも袋」
息子さんから「なぜ三種の神器ですか?」と聞かれ、片づけの基本は、目で見ていただけでは気づかない「不要なモノ」を発見することだと説明しました。デジカメの画面で確認し、メジャーでサイズを測って収納スペースを見直す。そして、迷ったら「何でも袋」にしまうことで、「片づけ」の実感が湧いてきます。
「片づけること」が楽しいと分かれば要らないモノを捨てることへと考え方が移っていくのです。時間を掛けて判断することや、自分を少し離れたところから見ることも必要なのです。
後日、水谷さんから個展を開くからと、招待状が届きました。













