マンション・開発・経営

テラモーターズ・徳重徹会長に聞く EV充電器普及への施策強化 新築マンションも「裾野が拡大」

 近年の世界的なEVの拡大・推進や将来的な国内ニーズを踏まえ、4月にEV充電インフラ事業を開始したTerra Motors(テラモーターズ、東京都千代田区、上田晃裕社長)。特に既存マンションにおいては導入費用を原則同社が負担し、合意形成のハードルを下げて普及を図るという戦略で大きな反響を得ており、今後は新築マンションでの導入にも力を入れていく。足元の状況や今後の方針などについて、創業者である徳重徹会長に話を聞いた。(聞き手・佐藤順真)

 EV充電設備・サービスの「テラチャージ」を公表した際、同社は「初年度に全国1000棟での導入を目指す」と目標を掲げていた。約2カ月が経過した6月21日現在、申し込み件数は400件に上っており、そのうち約20件では既に導入が決定。「国内の主要なマンション管理会社にはすべて検討してもらっており、導入を考えている管理組合ではほぼ決議が通っている状況」と徳重会長は手応えを語る。

 申し込みの内訳は、おおむね既存分譲マンション(以下、既存)が7割、賃貸マンションが2割、新築分譲マンション(以下、新築)が1割。また既存での申し込みについては管理会社が6割、管理組合等が4割となっており、当初の狙い通り既存マンションを中心に、各分野からの注目を集めている様子だ。

 こうした反響を踏まえて、同社は今後新築での導入にも注力していく方針を新たに示した。徳重会長はその理由として、「管理会社からのニーズを多数受け取る中で、新築の(導入に当たっての)課題が見えてきた。更に今後は、国内でも新築におけるEV充電設備の導入が当たり前になるだろう」と説明。課題の解消を進め、拡大していくニーズに対応することの重要性を述べた。

 新築におけるニーズ拡大の背景の一つとして、国内の大手メーカーが比較的安価な〝EV軽自動車〟を立て続けに発売し、急激な勢いで売れているという現状を挙げる。「極端に言えば〝都会のお金持ち〟に限られていたEV所有者の裾野が広がり、幅広い世帯でEV充電設備のニーズが生まれる」。加えて、「既にイギリスやドイツ等では、新築でのEV充電設備導入が義務化されている。国内では導入誘導策が出てきている段階だが、遠からず義務化の方向へ移るだろう」とし、ディベロッパーによる顧客アピールの手段としても存在感を増していくと考え、本格的な新築の強化を決めた。

機能面の実用性に自信

 EV充電設備へのニーズが高まる一方、現在のところ一般的な設備やサービスには導入費用以外にも課題が多く、「ハード面のセキュリティや利便性の不足に加え、料金体系やその徴収といった〝利用の管理〟が考えられていなかった面がある」と徳重会長は指摘する。

 それに対し同社の「テラチャージ」は、充電機器に加えて専用のスマートフォンアプリを開発・提供。稼働スケジュールから従量課金制による料金算出、支払いなどを一括で管理可能とした点が「ほかの会社にはない強み」だと言う。

 導入費用についても、既存と異なり原則無料とはいかないまでも、「(申請時期の制限が多い)行政の補助金に頼らずとも、事業者への負担を抑えた実用的なレベルに設定した」。今後想定される、新築デベからのニーズ拡大への対応に自信を見せている。