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社説 レオパレス21施工不良問題 社会的責任の原点に立ち返れ

 賃貸アパート大手のレオパレス21が新たな施工不良があったと発表してから1カ月。事態は収束に向かうどころか、その影響は広がる勢いだ。

 そもそもは、昨年4月と5月に明らかになった界壁の施工不備問題が発端。確認通知図書に記載されていた小屋裏界壁が施工されていない、図面と施工マニュアルの整合性の不備などにより、防火上の耐火性能が低下し、また、生活音が伝わりやすくなる状況が発生する可能性があることが分かった。これを受け、同社は全棟検査(3万9000件余り)を実施、それにより明らかになったのが、1324棟の施工不良だ。特に天井の耐火性能が不足している641棟7000人超には3月末までに転居を要請しているが、引っ越しシーズンでもあり、入居者は苦心している。そして、もちろんアパートのオーナーも、今後の人生設計に関わる問題となっている。

 にもかかわらず、外部調査に消極的な態度をとる経営陣に対し、市場は株価の急落という評価をした。ようやく、同社は2月末になって、弁護士で構成する外部調査委員会設置を決めた。3月中旬をめどに中間報告を行う。どのような問題点があったのか、再発防止には何が必要か、しっかりと会社の膿を出し切る覚悟が必要だ。

 その点では、同委員会の最終報告が出たら、社外取締役のみで今後の対応を決めるというのは、首肯できる措置だ。現経営陣の関与の有無など、第三者だから行える対策に期待したい。

 こうした企業の不祥事が最近多いことも気にかかる。免震ダンパーの検査データ改ざん、防火設備検査員資格問題、消臭スプレー大量投棄による爆発事故など枚挙にいとまがない。これらに共通しているのが、企業倫理の欠如だ。一時期、規模の大小を問わず、コンプライアンスという言葉が叫ばれ、多くの企業で企業の社会的責任という立場から、その考え方が導入された。しかし、現状を見るに、ただ言葉や組織の名称を変更しただけで、根本を理解し実践する会社は多くなかったのではないか。これは企業だけでなく、国、自治体ともに当てはまる。

 マネジメントの父、ドラッカーは、「企業が目指すのは利益ではなく、顧客の創造だ」と述べた。営利組織だとしても、利益は原資となり、活動を継続できるあくまでも燃料であり、目的は別にある。それはたくさんの顧客と潜在顧客であり、顧客を創造することで社会貢献につながり、また回り回って利益が出て、活動が継続できる。企業活動をそのように捉えた。それが多くの企業人に評価され、永続している企業を増やしている。

 社会から利益が生まれるから、その社会に対して責任を持つ。今回不祥事を起こした各企業には、ぜひ、その原点に立ち返り、多くの顧客の信頼回復に努めてもらいたい。