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社説 業界に多くの新人を迎えて 「働き方改革」に若い力を

 新年度に入り、各社で入社式が一斉に開かれ、住宅・不動産業界でも社会人1年生となった多くの新入社員が暖かく迎えられた。人口や世帯の減少、高齢化の進展、共働き世帯の増加など社会や市場の構造が大きな変革期にあり、長期的な需要縮小すら叫ばれる中、あえて業界を志した若い力に対する期待は大きい。生活者の暮らしや仕事といった、社会に不可欠な生活の基盤を支える仕事だという自覚と自信を持って、実務の最前線で一日も早く活躍してくれる日が待たれる。

 彼らがくぐりぬけてきた16年度の就職戦線は、昨年に引き続いて「超売り手市場」といわれた。企業側も、より多くの優秀な人材を確保するため、早い時期からインターンシップなどに取り組み、学生との関係構築に力を入れた。その結果、住宅新報社が主要各社を対象に実施した新卒入社状況のアンケート調査によると、新年度の新入社員の採用実績は、前年並みの人員を確保、もしくは増やしたとする企業が多く見受けられ、各社概ね計画通りに運んだものと見られる。

採用も大手の寡占化

 一方、大手を中心とする主要各社と比べると、中堅、中小の採用は売り手市場下で苦戦を強いられた模様だ。低成長経済のもと、若年層の間で安定志向が高まっていることを背景に、人材採用の面でも大手の寡占が進んでいるのは明らか。

 中堅・中小が大半を占めている業界構図からすると心もとないばかりだが、若い人材が今年も住宅・不動産業を志してくれたことは将来に対する不安よりも期待の表れ、やりがいを感じる仕事への意欲として受け止めたい。企業側も、彼らの実務能力を磨くことは当然として、「人」としての成長も同時に後押する人材の育成に努めてもらいたい。

 しかしながら、終身雇用制の崩壊、スキルアップを目指す転職が当たり前となった今日、優秀な人材として育て、その能力を組織で存分に発揮してもらうには、従来の教育・研修、人材育成というやり方では不十分だ。自己の成長が望めない、あるいは自己実現ができないと判断された職場は、働き手側が躊躇なく見切りをつけてくるからだ。

求められる柔軟性

 働く側の意識が大きく変わる中、日本社会で働き方そのものを見直そうとする、いわゆる「働き方改革」の機運が盛り上がりはじめていることは朗報だ。「働き方改革」とは、働きやすく、働き手の能力をいかんなく発揮してもらえる職場環境へ変革を推し進め、働き手と組織が共に成長を目指そうとする新たな試みだ。慣習やルール、固定概念にとらわれない柔軟な発想やアイデアが今後ますます必要とされてくるはずで、若い人材だからこそ期待できる部分は大きい。市場や業界に、新しい風を吹き込んでもらいたい。