総合

社説 好決算と構造変化 新しい事業の芽を育てよう

 主要不動産会社の3月期決算は増収増益基調が続き、ミニバブル期の最高益を連続更新する企業が目立つなど、良好だった業界環境を反映した。次期業績予想も増収増益が大半で、全体的に強気姿勢は変わらない。世界経済の低迷、株安や円高、マイナス金利政策で潮目が変わった製造業や商社、金融などとは対照的で、内需型産業の強みが出た格好だ。

 好決算を支えたのは、収益性の高い新築マンション・投資商品などの分譲物件が多かった。事務所・商業施設などの賃貸事業面積が拡大すると共に空室率の減少、賃料上昇があった。更にストック活用時代を迎え、中古住宅流通やリフォーム市場、管理運営事業の拡大基調が続いた――ことが挙げられる。また、低金利政策による金利負担の軽減も大きい。特に多大な資金を伴う大規模再開発事業などを推進するディベロッパーにとって、資金環境はかつてない良好な状況にある。

楽観できない足元

 だが、不動産市況の足元は先行きを楽観できる状況にない。マンションなどの分譲事業は富裕層・投資家向けが好調とはいっても、需要の厚い一般勤労者向けが価格上昇で売れ行きが鈍り、オフィス市場も全体的に回復感はやや足踏み状態にあり、不動産投資市場も変動要因を抱えている。

 その点、中古住宅流通や買取再販、リフォーム・リノベーションなどのストック活用分野と、高齢社会を迎えたシニア住宅市場は、拡大が見込まれる有望な事業分野である。これまでも各社は関連分野の守備範囲を広げ、ハード、ソフト両面からノウハウを蓄え、収益態勢の構築を図ってきたが、それが今後も続く課題であることは変わらないだろう。その中で各社が独自色を打ち出し、得意分野を見出していくかである。

 例えば、空き家や相続対策、CRE(企業不動産)、国・公共団体とのPRE・PPP、更に海外事業という、従来の枠を超えた事業に取り組む企業も増えているし、地域マネジメントなど、従来以上に地域に入り込む事業を志向する企業も目立ってきた。

10年スパンで見る

 これらは人口減少社会など構造変化を迎える際の新しい事業の芽でもあり、それを育てていくのが企業の社会的使命でもある。現在の分譲や賃貸、流通管理などの市場規模は当面、大きく縮小することはなく、競争に負けない商品・サービスを供給することで乗り越えることはできるだろう。しかし、10年、20年というスパンで見た場合、不動産会社としてどう備えていくか。新しい事業の芽を粘り強く育て、事業の柱を幾つも取りそろえていくことが肝要ではないか。