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社説 東京一極集中の是非 見直す柔軟さを持つべき

 地方創生担当副大臣の平将明衆院議員は「地方創生は東京一極集中の是正が大前提」と話す。しかし、民間エコノミストやディベロッパー関係者の間では「これからも東京の国際競争力強化が日本経済成長の要」として、更なる社会インフラの整備を求める声が支配的である。そのため、一般論としては「地方創生と東京一極集中の両立は可能なのだろうか」という疑問が浮上しがちである。 

第三の道探る

 しかし、これからの日本経済の成長を確固たるものにしていくためには、そうした二項対立型の問題提起こそ改める必要がある。日本人は対立する議論を論理的に深めていくことが苦手だからである。それよりは、最初から、双方を成就させる第三の道を探る方が、日本では有効である。

 不動産協会の木村惠司理事長も「東京と地方が両輪となり、二つの成長エンジンを持つことが重要」としている。その際、難しいのは地方だが「都市のコンパクト化を推進することで商業や居住環境を整備していくことができる」という。

 車の両輪という発想は重要で、大都市と地方は決して切り離されたものではなく、もともと共存関係にある。日本経済の高度成長を支えたのは、地方から東京へ大量に流入した若い労働力だった。首都圏への人口流入が一段落したのは21世紀に入ったころからであるが、高止まりといった状況で減少はしていない。現在首都圏の人口は約3500万人。何と全人口の28%を占めている。3大都市圏には国民の5割強が住んでいる。

異常な人口集中

 高度成長から安定成長、そして成熟経済下に入ったにもかかわらず、こうした大都市への異常な人口集中こそが日本経済の活性化を阻み、人心に閉塞感をもたらしているのではないか。「東京が日本経済をリードするしかない」という東京一極集中の是認は、富める者が富めば、貧しい者にも富が滴り落ちるというトリクルダウン理論を東京と地方の関係に応用したもの。地方の力を見くびるのは都市型人間の奢りというものであろう。トリクルダウンがまやかしであることは、昨今の所得格差拡大を見れば明らかである。

 日本経済の再興は、大都市と地方の「人・物・金・情報」のバランスを回復することから始めるしかない。時間がかかるので辛抱が必要だ。これまで緊急経済対策は何度も打たれてきたが、〝長期経済対策〟というのは聞いたことがない。 更に言えば、4大資源のうち、最も重要なのは「人」である。日本人が生き生きと働き、希望を持てる国土づくりは、本当に東京一極集中しかないのか、柔軟な発想を持つときである。