一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会(FRP、真鍋茂彦代表理事)は11月下旬、不動産流通業界に対する提言を行った。FRPは不動産流通推進センターが資格認定をしている公認不動産コンサルティングマスター、または宅建マイスターの資格保有者を会員とする団体。入会時にはその基本理念である「不動産流通プロフェッショナル憲章」の遵守を誓約しなければならない。
◇ ◇
不動産流通業界には様々な資格が存在するが、最も大事なことは公的・民間を問わずその資格保有者に対する国民の信頼があることである。そのためFRPでは会員になる際の条件として、同憲章に照らして(1)常に品位品格を備えた言動に努め不動産流通業界全体の地位向上に努めること、(2)不動産流通業務における高度な知識、見識をさらに高めるための自己研鑽に努めること、(3)一般消費者および社会から信頼される業界を目指して努力すること――の3点を求めている。
業界へ直提言
今回の提言は初めて不動産流通業界に直接向けてのものとなった(これまでは不動産流通推進センターへの提言としていた)。その理由について真鍋代表理事は「当協会もおかげさまで順調に拡大中。会としての体も整い、それなりに研究成果も積み上がってきたので今年度からは直接業界宛の提言という形にさせていただいた」と語る。
筆者は同協会を発足(21年)当時から取材しているが、集まる会員の志の高さに惹かれ続けている。組織の価値はその規模ではなく会員一人ひとりの質にある。同協会は会員の質と志の高さで成長し続けてきたように思う(25年4月1日時点で48人、顧問・推薦人を加えると約60人)。
今回業界への直提言となった内容は全7項目に及ぶ。
(1)業界を挙げて業務プロセスの標準化、営業ツールの開発およびDX化におけるシステムの共同開発と共同利用。
(2)DXなど時代の先端を行く優秀な人材を業界自身が育成。
(3)優秀な学生が不動産流通業界を選ぶための環境づくり。
(4)若手社員を会社でしか通用しない人材ではなく、社会的な行動規範を守れる人材に育てる。
(5)行動規範に則った「営業実務基準」の作成。
(6)消費者・クライアントへの誠実な対応(業界自らがルールを定め、透明性の向上に取り組む)。
(7)あらゆる数値や公共データの標準化・オープン化(プレイヤーの実績を正しく消費者に把握してもらうために仲介取引件数のカウント方法を統一すること、適正な不動産価格を導き出すために購入価額、売却価額を明示、データ化する)。
以上を要約するなら、(1)業界全体の底上げが大事(2)デジタル・AIを含む優秀な人材の育成(3)資格者である営業社員に対する国民の信頼向上とそれを業界全体でバックアップするシステムの構築――ということだろうか。提言は最後に、不動産流通業界の改善に当たっては「全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会をはじめとする全業界団体が一致して協働体制を目指すこと」が最重要事項とした。また、宅地建物取引業法の見直しにも触れ「個人間の賃貸仲介、売買仲介、事業者が自ら売主となるケースなど異なる業態に対する消費者目線での対応、更にはDX化など現状に即した見直しが必要」とも述べている。
◇ ◇
東京カンテイが10月末に発表した「リセールバリューランキング」(24年改訂版)によれば、東京都心の一等地にあるタワーマンションでは購入時の3倍以上の価格で取引されている物件が数多くあることが分かった。中古市場は新築物件の販売価格と違い取引価格が公表されているわけではない。それだけに査定価格の公正さが何よりも求められている。仲介を担う個々の営業マンの資質の高さが求められると共に、その責務は大きい。




