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酒場遺産 ▶38 神田淡路町 居酒屋しんえつ 北陸料理で「90分せんべろ」

 都営新宿線と東京メトロ丸の内線が交差する淡路町駅から、北西側に少し入った細い通りに面するこの北陸料理の店が以前から気になっていたが、先日初めて仕事の帰りに寄ってみた。期待以上の店だった。キャパは28席だが、厨房に料理人3人、フロアに2人と手厚い。酒は富山・石川・福井の地酒を中心にそろえており、その中から三笑楽純米、常山純米吟醸、ツマミは富山おでん、炙り〆鯖、おぼろ昆布握りなどを頼んだがどれも美味い。この地で店をはじめ30年近くという。北陸の地魚と地酒を供する手頃な居酒屋だが、人形町にある本店「信越」は個室もある本格的な店のようだ。店内の壁に所狭しと貼られたメニューを見れば、冨山の地酒は満寿泉、勝駒、林、UO、羽根屋、幻の瀧、三笑楽、立山、福井は黒龍、常山、九頭竜、伝心「土」、毛利、早瀬浦、石川は手取川、遊徳、天狗米、菊姫、そして新潟は〆張鶴、八海山。グラスで400~800円、一合でも出してくれる。どれも全国的に名の知れた名酒ぞろいで、北陸が酒処であることを改めて認識させる。食も素晴らしい。富山おでん880円、たら白子天婦羅780円、里芋と茄子のおろし煮680円、しめ鯖炙り720円など季節のお薦めが美味い。北陸刺身盛合せ、氷見盛り、立山盛りなどの他、白エビ刺し、サスの昆布〆など生もの、のどぐろ一夜干し、炙りホタルイカ、イカ黒つくりなども出す。食事は氷見うどん、白エビ土鍋ご飯(40分かかるという)、かに玉雑炊など、メニューを見ているだけで食欲をそそるものばかりだ。これだけのクオリティーながら値段も手頃だ。そして17時~18時30分は「しんえつアワー」で、小鉢がつき、生ビール・焼酎・日本酒(立山・八海山・電信・〆張鶴・九頭竜)、熱燗一合が全品310円と「90分せんべろ」もできそうだ。繁華街から離れた目立たぬ立地だがファンも多い。   (似内志朗)