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トップインタビュー 西武リアルティソリューションズ 齊藤朝秀社長 リゾート地の価値向上へ 品川・高輪エリア開発 歴史や緑地生かし特色出す

 西武グループの不動産開発を担うために、グループ内組織再編で、4月に誕生した西武リアルティソリューションズ。今後の西武グループの成長エンジンの中核となる事業として不動産事業が位置付けられている。総合不動産会社として、全国のグループの資産の最有効活用を実現するために、どのように事業を展開していくのか。齊藤朝秀代表取締役社長に話を聞いた。(聞き手・桑島良紀)

 ―改めて就任の抱負・意気込みを。

 「責任重大と思う半面、強いやりがいを感じており、頑張っていきたいと思っている。社員と一緒になって、これからのグループの不動産セグメントを中心としたいい歴史を刻んでいければと考えている」

 ―グループ資産の価値最大化は?

 「歴史的にグループで非常に多くの不動産を全国に保有している。約10年前に西武プロパティーズという会社が発足してから、従来からグループの保有資産の極大化に向けて、西武鉄道やプリンスホテルから業務受託という形で取り組んできた。西武鉄道からは、沿線の商業開発や住宅開発、プリンスホテルからは品川や高輪などの都心の好立地の再開発を推進してきた。自社所有では『東京ガーデンテラス紀尾井町』の再開発を実施してきた。

 (新会社では)この流れはそのまま続き、今回はプリンスホテルが保有していたリゾートの案件が加わってきた。外資ファンドに売らずに保有するホテルもまだ多く残っているので、引き続きホテル側と一緒にバリューアップしていく。もう一つは、軽井沢や富良野といった良好なリゾート地の資産を最有効利用することを議論している。リゾートの低未利用地についてはゼロベースで見直し、バリューアップしていく」

 ―90年代に破綻しかけた不動産プロジェクト立て直しで得た経験をどう生かすか?

 「90年代に通貨危機や山一証券倒産などがあって、様々な神話が崩れたときに、担当者として見えない将来を皆で考えることに従事してきた。当時、予想外のことが起こっていたので、上司も誰も答えを持っていなかった。そういった中で自分たちが考える最善を闊達(かったつ)な議論の中で模索していった。

 西武に入り先行して行った『東京ガーデンテラス紀尾井町』の再開発でも、その経験が非常に役に立った。当時は周辺にオフィスがほとんどなく、賃料相場よりも高い賃料を設定した。周りと同じことをやり、おかしくなった事例を90年代に数多く身をもって見てきたことで、皆で議論して考えたことが変でなければしっかり進めていけばいいと考えられた。

 将来は今とは違う。(コロナ下で)リスクに敏感になっているが、自分たちで議論して確信が持てる投資は、これからも行っていけばいいと思っている。そのために、物件の企画だけでなく資金調達の方法まで考えられるノウハウを持つ人材育成が必要で、そういった開発ができる会社になる必要がある」

 ―競合が激しい都心での競争力の確保は?

 「西武グループは鉄道とホテルがコアになる事業を担ってきた歴史があり、鉄道では安心・安全、ホテルではホスピタリティで、不動産事業も安全・安心に配慮しホスピタリティがある施設を造っていくことを開発の基盤として意識して実施してきた。

 田町や品川駅周辺で多くの再開発事業が進んでいるが、(品川や高輪エリアにおいて)どのような用途を組み合わせて再開発をすべきか盛んに議論している。歴史的な建物や広大な庭園を大事なコンテンツとしてより魅力的なものにしていく。周辺で相当なオフィス開発があり、特色を出せば、このコンセプトに共感してくれるテナント企業が現れる。ユニークさを持った施設をしっかり造っていくのが営業的に成功する重要な要件になる」

 ―沿線のまちづくりについて。

 「沿線のまちづくりにおいて地域との連携は大事だと考えている。所沢駅西口の再開発では、エリアマネジメントやタウンマネジメントに力を入れており、様々な準備を始めている。

 住民や働く人が地域に誇りを持ってもらうことが沿線価値向上につながる」