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「成人年齢18歳」 全宅管理 岡田日出則専務理事に聞く 賃貸現場の影響 (下) 家賃負担能力で対処 学生と社会人で判断変わる

 成人年齢は18歳となった。保護者の同意がなくても1人でクレジットカードや住宅の賃貸借契約が結べるなど様々な契約行為ができる。成人年齢を従来の20歳から引き下げたことで賃貸住宅の契約現場に及ぼす影響はあるのか。全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)の専務理事で、おかだハウジング(横浜市都筑区)代表の岡田日出則氏(写真)に聞いた。

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 ――成人年齢の引き下げをどう受け止めていますか。

 「そもそも論として以前は、(親の同意が必要だが)男性18歳、女性は16歳で結婚できたけれど成人ではない、ということに違和感があった。18歳で契約行為ができるようになったことをネガティブには捉えていない。例えば、生活が苦しく生活保護を受けている家庭は少なくないが、その家庭の子息・子女が高校を卒業して地元企業に働き始めて部屋を借りようとしても保護者の同意なく1人では借りられない現状があった。こうした保護者は連帯保証人としての信用度も低い。宅建部会では、そうした若者に部屋を準備して電化製品ををそろえて受け入れ、20歳になってから本人が借主になれるなどの活動をしていた。18歳から働く若者にとって親権に関係なく契約できるメリットは小さくない。もちろん我々は、よりきめの細かい案内と説明が必要だ。ただ正直、現場は成人年齢20歳のときと変わっていない。入居は賃貸負担能力で家主や不動産会社は判断する。これまでも20歳になったからと本人が契約するケースは少なかった。保護者と契約して20歳を過ぎて社会人になったら入居本人と契約し直すケースは珍しくなかった。年齢というよりも収入、勤務先、人間性で賃貸オーナーが入居を判断するセオリーが崩れたわけではない」

 ――若年の契約トラブルは業界を問わず増えています。

 「我々の業界で言えば住宅に関する教育がないことが問題だ。賃貸の敷金、礼金、更新料、共益費とはどういう性質のお金なのか。全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)ではハンドブックなどを作成して学校に寄贈しているが、意味合いとしては高校を卒業する前に学校でも教育してほしいからだ。家賃をクレジット決済する怖さを知らない若者も多い。家賃を滞納するとクレジットカードが使えなくなる可能性もある。過去に私は、横浜市内で配属前の新人の高校教員を対象に部屋を借りる基礎知識セミナーを開催したが、自治体も積極的に取り組んでもらいたい」

 ――賃貸借契約のリスク軽減の取り組みについて。

 「当社では、今年1月から高齢者の連帯保証人を切り替えている。気が付くと80歳や85歳で連帯保証人をしている人が少なくなかった。年齢的なリスクを考えて75歳で連帯保証人を代えるか、家賃保証会社を使ってもらう。反発もなく対応してもらっている」

 ――賃貸住宅の今後をどう展望しますか。

 「空き家の増加や人口減少に対する危機意識は管理会社もオーナーも薄いのが実態だ。だが、どこかで分岐点は来るはず。法人契約の外国人の生活水準は上がっており、家賃の水準も上がっているが、日本人は逆に生活水準を下げている。

 賃貸住宅市場は転換期を迎えていると実感する。先日、当社で法人契約したインドネシアの若者はバイクを購入すると言っていたが、日本の若年層とは様相が違う。日本人の貧困率が高まることに危機感を抱いている。部屋を借りる人たちの属性が大きく変わる可能性が高まっている」(聞き手・中野淳)