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社説 賃貸住宅管理業法制定へ前進 賃貸住宅も管理で選ぶ時代に

 「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律案」がこのほど国会に提出された。法案成立後、1年以内に施行される見通しだ。長年にわたって賃貸住宅管理業法の創設と賃貸不動産経営管理士の国家資格化を要望してきた住宅・不動産団体からも、同法案が提出されたことに「大きな前進」と高く評価する声が聞かれた。売買市場では、「管理を買え」というのがマンション購入の一つのセオリーとされてきたが、賃貸住宅市場でも「管理で選ぶ」時代がいよいよ到来したといえそうだ。不動産の最適活用が謳われた「不動産業ビジョン2030」でも、これからの不動産市場で「管理」の重要性がますます高まっていくことが指摘されている。法制度に則った賃貸住宅管理業者として、「選ばれる管理」に向けて資質向上に努めると共に、多様化する社会ニーズに応えていくことが期待される。

 同法案は、賃貸住宅管理業者に登録を義務付ける「賃貸住宅管理業者登録制度」の創設が1つの柱となる。現在、任意登録として運用されている「賃貸住宅管理業者登録制度」をベースとしたもので、一定の賃貸住宅戸数を管理する管理業者は、大臣登録が義務化される。また登録業者には業務管理者として宅地建物取引士もしくは賃貸不動産経営管理士を配置することも義務付けられることになる。ライフスタイルの多様化に伴った賃貸住宅需要の拡大や空き室の増加、賃貸オーナーの高齢化など様々な問題や課題が賃貸住宅市場を取り巻いており、これらへの適切な対応でもプロとしての活躍が期待されている。

 賃貸住宅管理業者登録制度を巡っては、11年に運用開始した当初は、任意登録という制度そのものの位置づけが明確ではなかったことに加えて、課された業務負担の割に「メリットが感じられない」として登録業者数が伸び悩んだ経緯がある。同法案が目的とする「賃貸住宅の管理業務の適正化」に向けては、高いコンプライアンス意識と倫理観を兼ね備えた業者に、より多くの果実がもたらされる制度としての運用がカギを握る。

 もう1つの柱が、全てのサブリース業者を対象に勧誘やマスターリース契約締結に関わる不当な行為を規制する内容で、サブリース業者と共に勧誘を行う建築会社なども規制の対象に加えられている。事前の重要事項説明等を義務付けると同時に、故意に事実を告げないあるいは不実を告げるなどの不当な行為を禁止する。サブリース業者の破綻により、オーナーとの間で家賃保証トラブルに発展した「かぼちゃの馬車」事件などを受けて、サブリース業者等への規制の必要性が高まっていたことに対応したものだ。

 賃貸住宅管理業界には、一般受託管理、サブリースを問わず今回の業法制定の更に先を見越した管理業の適正化のために、積極的な提案と行動が求められる。