総合

社説 空き家数が過去最高に 官民挙げ更なる取り組みを

 全国の空き家数が過去最高を更新した。先日発表された「13年住宅・土地統計調査」によると、その数は実に820万戸。総住宅数(6063万戸)に占める割合は13.5%に上る。空き家問題に詳しい富士通総研の米山秀隆上席主任研究員によると、空き家率は8~10%の範囲内であれば問題ないというが、現時点でそれよりも214万~335万戸多い計算になる。少子高齢社会が更に進む日本において、空き家はますます増加することが予想される。「空き家問題」は、官民挙げて取り組まなければならない社会問題の一つと言える。

 数年前から、自治体の間で空き家の適正管理を求める条例制定が相次いでいるが、近年は、更に実効性ある内容を定める動きも見られる。京都市では14年4月から、一定条件のもと、老朽空き家の所有者の同意なしに市が必要最低限の措置を行える条例を施行したほか、固定資産税の課税情報の目的外使用、すなわち、課税情報を所有者特定という「目的外」の場合でも使用できることを明確に定めた。

 富山市では、固定資産税を6分の1に軽減する「住宅用地特例」について、一定の老朽住宅の場合には解除する施策を13年度から始めた。住宅用地特例は、「どのような状態でも住宅を残しておけば、固定資産税が軽減される」といった考えにつながるため、老朽空き家の放置につながるという指摘があるものだ。ただ、この特例を解除することは、様々な視点から難しいとされていたが、富山市は、「要領」で独自に定めた。その気になれば、自治体単独の考えで実現可能であることを示したといえる。

 そのほか、東京都足立区では、「復興税」を老朽住宅や耐震不足の建物への解体費補助の上乗せ分に充当し、他の自治体と比べると、かなり高い補助額としている。

 一方、民間の不動産会社の間では、「空き家の巡回サービス」といった取り組みで、空き家を適正管理しようという動きがある。しっかり管理することで更なる老朽化防止を目的としたものだ。ただ、期待されているほど利用率は上がっていない。大半は月額1万円程度の料金設定だが、戸建て所有者には、マンションと違って「管理費」という概念が不足していることがうかがえる。しかし、空き家が放置されている大きな要因は、有効利用の方法が分からないということなのだから、この管理ビジネスを通じてコンサルティングにつなげていく努力も必要だろう。

 今ほど空き家問題に真剣に取り組む姿勢が表れたことはない。地域の問題として、不動産会社に寄せられる期待も高まっている。一般消費者に対しても「所有者の責任」を果たしてもらう当事者意識を強く持ってもらう取り組みも必要だ。空き家問題への対策は、待ったなしだ。