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酒場遺産 ▶91 高円寺 大衆割烹 真佐 老舗の料理は正統派

 高円寺駅から阿佐ヶ谷方向へ続くJR中央線の高架下の道を、路上酒場で賑わっているエリアの先へ歩くと、めっきり通行者も少なくなり、薄暗い高架下の天井にパラパラと並ぶ蛍光灯が淋しさを醸し出す。そんな辺りに、創業59年の大衆割烹大衆割烹「真依」はある。入口以外はシャッターが閉じており目立たないが、暖簾をくぐり扉を開ければ意外に店は広い。右手に奥に長いL字型のカウンター10数席、左手は小上りになっていて20席ほどのキャパだろうか。家族経営なのだろう、お父さんは揚げ担当、お母さんご飯類と飲料担当、息子が魚料理担当だ。家族らしい雰囲気が滲み出る。

 L字カウンターの短辺に座った筆者は、目の前でテキパキ働く白髪ショートカットのお母さんと話をしたが、夫婦でこの店をはじめてまだ初代という。ということは齢80歳くらいだろうか、そう感じさせない身のこなしだ。

 さすが老舗というべきか、料理は正統派。突き出しの切干し昆布の煮物がいい。刺身盛合わせを一人前頼んだが、まぐろ中トロ・赤身・アワビ・鯛・イカ・コハダ・海老・赤貝など、どれも新鮮で美味しい。今夜は時間が遅かったので麦酒を軽く飲むのみだったが、壁の白板メニューを見れば、酒類も一通りそろい料理も豊富だ。まぐろぬた、地ハマグリ酒蒸し、まぐろ山掛け、太刀魚バター焼き、生うに・コハダすし、長芋梅和え、いくらおろし、イカ納豆、べったら漬けなど、定番メニューが500円前後と手頃な価格だ。刺身盛合わせに加え、フグカマの唐揚げ、細巻き(ネギトロ)が人気らしい。

 店に入った時間が遅かったためか、客はカウンターの離れた席に3人、小上がりに4人の常連らしき客のみ(おかげでゆっくり飲めた)。小一時間サクッと飲み勘定をしたが思いのほか安い。酒場は数多ある高円寺だが、その中でも「穴場」であることは間違いない。(似内志朗)