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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇121 「女性塾」へのエールか 不動産業に〝万感〟の想い 「働く意義」語る川合課長

 初の女性不動産業課長として注目を集める川合紀子氏は3月26日、明治記念館で開かれた第38回不動産女性塾の講師に招かれた。桜の開花宣言を前に底冷えの雨となるあいにくの天候だったが全国から80名弱が参加。いつもは全体の3割程度しかいない男性参加者がこの日はなぜか半数程に達していた。 

 女性課長ということで注目される理由は日本の役所も企業もまだまだ女性の管理職登用率が低いからだ。しかし、川合課長は言う。「私はたまたま初の女性不動産業課長になったが、私のあとはもう誰も特別のこととは思わなくなるだろう。今役所はそうした方向にあるし、全国の自治体の中には国よりも先行しているところが少なくない」。

 前回の女性塾講師も国交省の課長、局長(住宅局)、消費者庁長官などを務めた伊藤明子氏だったが川合氏はこうも語った。

 「私が99年に入省したときはそうでもなかったが、それから10年ぐらいの間に育児休暇など色々な制度が充実し、女性もチームの一員として楽しくやりがいをもって働くことができるようになった。それも伊藤さんのような大先輩がいて道を切り拓いていってくれたから。私も彼女のように〝女性だってやればできますよ〟といういい見本になれるように頑張りたい」。

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 実はこの日、川合課長の到着が少し遅れた。理由は翌日の国会で不動産に関する大臣への質問が行われることになり、その準備に追われていたからだ。お詫びしたあとで、川合課長はこう述べた。「かつて役所は勤務時間が長いなどブラックのイメージがあったが、今はチームで仕事ができる働きやすい職場になっている。今日も部下に任せてこうして出て来られたことが素晴らしいと思う」

感謝される仕事

 女性の働く環境についての話から始まった講演は不動産女性塾メンバーへの強いエールのようにも聞こえた。女性塾の使命の一つは、女性の優しさとパワーで、不動産業界に対する負のイメージを払しょくすることだが川合課長は〝相談してよかった〟と国民から感謝してもらえる仕事を増やしていくことが重要だと語る。そして、空き家ビジネスは不動産業を「感謝される仕事」に転換していく契機になるとも。喜びや感謝への謝礼が「報酬」で、宅建業法は「報酬」という言葉を使っているのに業界が仲介「手数料」と言っていることに川合課長は首をかしげる。

 空き家業務をビジネス化していくための施策の一つとして、川合課長は今年半ばをめどに「空き家管理業のガイドライン」を策定すると表明。これは空き家業務に係る報酬などについて解釈を明確化しルールを定めるもの。空き家管理といっても内容は様々なので、「ここまですれば、この程度の報酬をもらってもいいのでは」という目安を媒介報酬とは別に示す予定だ。

 改正空き家法は昨年12月に施行され今年本格稼働となるが、川合課長は「不動産業による」空き家対策に万感の想いを寄せてで取り組む意向を見せている。そして最後に、不動産業者が空き家対策に取り組む意義をこう語った。

 「人口減で不動産取引が減少しマーケットが縮小していくことは業界の大問題。それを克服して市場を活性化させていくためには官民の連携、二地域居住など人の流れの創出、空き家バンクなど全国的視野を取り込むことが重要になる。また、地域の価値を創出する新たなアイデアも欠かせない。これらを実践していくためには女性の活躍など多様な人材を投入するダイバーシティの考え方が不動産業界に求められている」と。