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酒場遺産 ▶36 清川 (山酔酒場) ディープ山谷エリアの着物姿の女将

 南千住から明治通りを南に下ると「山谷」エリアだ。山谷は台東区の北東部清川・日本堤・東浅草一帯の旧地名で、労働者が集まる寄せ場とドヤ街の通称として使われる。旧吉原遊廓の位置とも重なる歴史の濃いディープな場所だ。今では外国人バックパッカーの姿も多く、日雇い労働者と外国人の姿が混在する。創業60年大衆酒場「山酔」は清川に所在し、明治通りから東に少し入った淋しい通りに面して立つ。

 創業から3代目という輪郭のシャキッとした着物姿の老女将、厨房ではスキンヘッドの主人が忙しく料理をつくる。L字カウンター7席の他、3人掛けカウンター、小上がりの座卓が2つという配置で結構広いが、筆者が訪れた時はカウンターにはシニアの男ふたりのみ。壁の黒板には几帳面な字でメニューが書かれているが、字が小さく寄らないと見えない。しゅうまい、ほうれん草おひたし、鮭ハラス、板わさ、鯖塩焼き、めざし、うるめ鰯、茄子焼、ニラ玉、いかなんこつなどは300-500円程度と手頃だ。少し高めのものでも馬刺し750円、銀タラ西京みそ漬焼き900円、豚キムチ鍋980円。酒は麦酒、日本酒(大関、杜氏のこころ)、焼酎、角水割りなど300~600円。年の暮れ、ふらりと寄り、大関熱燗、お新香、千住葱天を頼んだ。千住葱天は食べたことがなかったが、北千住だけで採れる太い葱の天麩羅は実に美味い。小一時間カウンター席で過ごしお勘定1000円丁度。年の暮れ、店のテレビではWBCのレビュー。村上が復活した打席はいつ見ても心を動かされる。今年(23年)は良い年だったかな。いいことも冴えないこともあったが、大方OKだろうか。