売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(11) 契約不適合と買主から言われないために「現地調査の方法とポイント(2)」

 前回からの続きは、現地調査での(2)適法性における都市計画法の確認となる。

 都市計画法では用途地域ごとに利用できる用途が定められているので、それに現況の用途が合っているかを見ておこう。筆者の事例では、第一種低層住居専用地域で認められている兼用住宅の住宅兼店舗で賃貸をしているオーナーチェンジ物件を見に行ったところ、明らかに住宅全体を店舗として利用している兼用住宅ではない物件があり、違法として手を引いたことがある。金融機関の融資が付きにくく、流通できないことがあるからだ。違反をしているようなら売主に是正するようにアドバイスしよう。

 (3)権利では賃貸借などの占有状況、隣地からの越境有無、その他所有権等を阻害する要因を見ていく。空き家のはずなのに第三者が住んでいる気配があるのなら使用貸借や不法占有が考えられる。売主には使用貸借なら退去が確実か、不法占有なら購入者の権利が守られるのかを確認しておきたい。また、隣地からの工作物や樹木の越境がないのかも見ておく。樹木の越境なら隣地との間で越境解消の合意書を結べばよいが、建物や車庫の屋根や軒、塀などの工作物の越境は取り壊しもあるので費用や時間がかかり、また、隣地所有者も容認しづらく、一筋縄ではいかない。なお、隣地からの建築や工作物の越境は、再建築の際に建ぺい率や容積率、また許可に制限を受けることがあるので注意をして見ていきたい。

 そのほかに高架線や電柱、ゴミ置き場、埋設物などの第三者の権利が敷地に入り込んでいると見られるならば、その権利や使用料がどうなっているかを調べておこう。

 (4)維持管理では、敷地内の建物や工作物に契約不適合の状態(品質不良や数量不足)がないかを見ていく。目視で十分だ。建物の傾きや破損、大きな傷汚れがあるなら、後日、買主から契約不適合責任を問われる可能性が出てくるからだ。そのため、(1)売買価格と品質は適合しているか(たとえば設備の故障があるなら、その分補修費用がかかる。最初から故障の明示がないようなら売り出し価格はその分の減額が妥当という判断もある)、(2)不適合ならその補修等はどうするのかを現地で判断しておきたい。また、修繕や補修をしている箇所があればその状況を含めて確認をしておきたい。契約不適合責任への対応もあるが、築年数で判断をされやすい建物などの利用期間の目安や買主への説明にも必要となる。

 以上、不動産の現地調査方法について述べてきた。目視と簡易計測によって、どのような不動産なのかを現地で具体的に把握しておこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。