東京都板橋区のときわ台駅南口近くの神社脇に『森の交番』がある。民間の交番で、人が集まる拠点という位置付けだ。5年前、東京都の地域振興事業の1つとしてできた。「地域社会には誰でも集まることができる拠点が必要」だが、「公共施設ではだめ」と。そのアイデアと場所を提供したのが小林保男さんだ。
▼ときわ台天祖神社の宮司。地域社会をどう活性化させるか。「まちの中に村をつくろう」と取り組んでいる。子供の頃、戦争で長野県に疎開し、戻って東京大空襲にも遭遇した。地域社会の中で神社や祭りの役割などを考え、実践していることでも知られる。『森の交番』は、今では番所というより、狭いながら人が集まるサロンの様相。神社の飼い犬も毎日出向いて、コミュニティ形成の一端を担っている。
▼小林さんは神社の役割の第一は「原風景を維持すること」であり、「地域のカルチャーセンターにならなければならない」ことだと強調する。かつては「上板橋村」。都会化して訪ねてきた人に「まちは変わってしまったが、神社と森は昔のまま」と言われてから、地域との関係を強く意識するようになった。
▼『森の交番』は地味な活動だが、すっかり定着した。「同じような施設が次々とできていくかと思った」が、そうはならなかった。地域事情があり、そこに地域活性化の難しさがあるが、様々な分野からのアプローチがその可能性を広げているようだ。