政策 総合

社説 高齢者住宅推進機構に期待 マンションの低層階など多様な供給形態を

 震災以降、高齢者の住まいに対する関心が高まっている。一人住まいであったがゆえに避難が遅れ、危うく津波にのみ込まれそうになったケースもある。

 一方、避難所の生活は不便でも、地域の人たちが毎日顔を合わせ助け合う日々は、心に張りが生まれるということもあったのではないか。その証拠に、せっかく抽選に当たった仮設住宅なのに入居を拒む高齢者もいたという。

 

関連業界を横断

 そうした中、一般社団法人の高齢者住宅推進機構が8月に発足した。

 不動産会社、社会福祉法人、介護事業者、ハウスメーカー、医療法人など関係業界を横断する会員が集い始めている(9月15日時点で正会員20社、準会員4社)。

 同機構は主に、今年度からスタートする「サービス付き高齢者向け住宅」について研究し、普及促進を図るのが目的。

 団塊世代がすべて75歳以上となる25年には高齢者の1人暮らし世帯は680万世帯に増加する見込みだ(10年=470万世帯)。高齢者人口に占める割合は20%にも達する。

 それに対し、我が国の高齢者向けの施設や住宅は定員換算で全高齢者の5%程度しか供給されていないのが実態。しかもその大半がプライバシーや生きがいの確保が難しいといわれる施設系だ。

 高齢者が最期まで、人間としての誇りを感じ、安心して生きていける住まいをどう供給していくかが、政策面での大きな課題となっている。

 そのカギを握るのが、サービス付き高齢者向け住宅だ。これは医療や介護との密接な連携が必要となるだけに、関連業界を横断する会員で組織されている同機構に対する期待は大きい。

 機構は3つの研究委員会を設置し(1)サービス付き高齢者向け住宅の事業推進に関する研究(2)介護・看護サービスなどに対応しやすいリフォームなど高齢者の住空間に関する研究(3)地域における多様な主体による包括的ケアサービスの研究――を進める。

 

親と子世帯が近居

 住宅・不動産業界では、例えばサービス付き高齢者向け住宅と子育て支援型マンションを併設して供給するなど意欲的取り組みが始まっている。

 これは、高齢期を迎えた親世帯と子供世帯が近居し互いに助け合うのがコンセプトだ。これからの日本では一人っ子同士が結婚して、双方の親世帯が一組の子供世帯と近居しなければならなくなるかもしれない。分譲マンションの低層部にサービス付き高齢者向け住宅を併設するのも一案である。

 今後、日本は人類史上どの国も経験したことがないスピードで高齢社会に突入していく。世界一の長寿国となった日本が経済成長(GDP)だけでなく、「豊かに老いていく」ことも幸福の尺度とするような社会がつくれるのか、世界が注目している。