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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇118 第2回リーサ・セミナー アフターコロナとマンション市場 不動産価値にもパラダイム変化

 一般社団法人不動産総合戦略協会(RESA=大木祐悟理事長)は3月1日、第2回リーサ・セミナーを開いた。テーマは「アフターコロナとパラダイムシフト」。

 昭和・平成から20年までをコロナ以前、23年からをアフターコロナとして、社会にどのようなパラダイムシフトが起きたのか。

 第1部で基調講演を行ったリーサ客員研究員の水谷敏也氏は、(1)WEB会議の活用で会議やセミナーに遠隔地からでも自由に参加できるようになった(2)働き方改革で時差出勤、テレワークが浸透した(3)SNSの普及でいつでも気軽に情報交換ができるようになった(4)社会的意義としてダイバーシティ、ジェンダー、サステナビリティなどが注目されるようになったなどの4項目を挙げた。

 これらの点を踏まえ、第2部では水谷氏と大木祐悟理事長が「2024年のマンション市場の見方」についてトークセッションを行った。

 以下はその採録である(敬称略)。

 大木 東京のマンション価格が高騰している。そうした中、港区だと坪1000万円を超えるものが売れ、700~800万円ぐらいは売れていないという話も聞く。富裕層はいいものはいくらでも買うが、港区で坪700~800万円はさほどでもなく、かといってパワーカップルでは手が届かないということらしい。東京でのこうした状況をどう見ていますか。

 水谷 今は市場が2極化している。中間がどこかに行ってしまった。東京圏のマンション供給はリーマンショック前には10万戸あったが、今はそれが3万戸。なくなった7万戸を買っていた人たちの市場がなくなったとも言える。残った3万戸を供給しているのは大手だから体力があるので値を下げずにゆっくり売っていくことができる。

 一方でコストアップは今後も続くから当面今の状況に変化はないと見ている。

厳しいゼネコン

 大木 その建設費の高騰はいつまで続きますか。

 水谷 今期第三四半期の数字を見ると清水建設が大赤字、大成建設もかなり厳しく計画に届かない状況。4大ゼネコンのうち2社が大変苦戦をしている。しかも来期好くなる見込みもない。ということでこれから受ける仕事は相当いい条件でしか受けないと思うので、建設費が下がる見込みはない。

 この2社が悩んでいるのはサブコンの問題。いわゆる設備屋さんたちだが、人が集まらないそうです。いくらお金を出しても来ない。半導体など大型工場の建設に人を取られているからだが、ビッグフォーの一つ、鹿島建設がそれら職人を総取り(独占)してしまっているという話もあって、現に鹿島建設の利益利率はかなり高い。

 大木 建設費単価は以前だと東京を1とすると大阪が0.9、福岡が0.7、熊本あたりは0.5~0.6というように地方に向かってなだらかだったが、最近は熊本がTSMC(台湾の半導体会社)の進出で一気に大阪を超えたという。こうした突出現象についてはどう思いますか。

変わる投資尺度

 水谷 昨年の都道府県地価調査でも上昇率上位地点は熊本と北海道で占められていた。地価そのものは東京の銀座にかなわなくても、〝勢い〟という意味では東京をしのぐところが出てくるようになった。最近の地価上昇は外資による投資が大きいが、日本と外資とでは投資尺度が違っていて、外資はあくまでも収益性重視だ。彼らは今、オフィスや住宅よりも工場案件に高い収益性を見込んでいる気がする。

 大木 私もこれから新築マンションの供給は減っていくと思います。そうなるとストックの価値が上がるわけですが、ストックには維持修繕費が掛かります。

 水谷 今後マンションの大規模修繕費も相当上がってくるので、一括払いを分割払いにするとか、早めに長期修繕計画を見直すとかいったことが重要になると思います。

 大木 本日は貴重なお話をありがとうございました。