酒場好きには広く知られた立飲みの聖地と言われた「大衆立呑酒場 富士屋本店」。渋谷桜丘の坂の道に面するこの店は、元々酒屋が1971年にはじめた立飲み屋(角打ち)で、古いビルの地下の立飲み、上階の立飲みワインバーの他、三軒茶屋のグリルバーなど複数の店を出していた。多くの人に愛されながらも2018年再開発のため店を閉じたが、現在、旧店の対面あたりに「立呑 富士屋本店」、ワインバーと三軒茶屋のグリルバーの流れを継ぐ中央区浜町「富士屋本店 日本橋浜町」として生まれ変わっている。2つの新しい「富士屋本店」に旧店の燻し銀の雰囲気はないが、酒と食はかつてに劣らず素晴らしい。
渋谷桜丘「立呑 富士屋本店」では、気合の入った若い板前が出してくれた北海道産の鰤、島根産ホウボウは新鮮で実に美味かった。魚に合うサッポロ赤星。元々ふたつの店の建物をつないだ変形敷地、カウンターもふたつに分かれて、屋外空地には立飲みテーブルも置かれている。麦酒・焼酎・日本酒など取り揃え、ツマミもハムキャ別、椎茸天、茄子味噌など旧店メニューの他、〆サバ、生牡蠣ポン酢、あん肝ポン酢、寒ブリ塩たたき、鰯海苔巻、イワシ梅煮など、お手頃価格だ。
浜町「富士屋本店 日本橋浜町」は、浜町中ノ橋交差点近くの民家のリノベーションで、1階がカウンター立飲み、2階はテーブル席、3階はテラス席。お洒落な立飲みワインバーといった感じだが、供される酒と食が素晴らしい。麦酒やハイボールなど300円から、鶏レバームース、鰯生春巻、穴子と里芋のテリーヌ、栄螺肝と茸バター焼きなど、どれも手頃な価格で美味しい。ひとりでも友人とでも気楽に立ち寄れる店である。(似内志朗)
