総合

大言小語 住まいの役割

 1年を総括する時期が近づいてきた。住宅・不動産業界の23年の重大ニュースは、次号をお待ちいただきたいが、個人的には物価高や実質賃金が低下する中で、住まいがある有難さを実感する1年だった。

 ▼日常の備えについて考える年でもあった。関東大震災から100年、業界内外の様々な取り組みが注目された。例えば、UR都市機構は、これまでのまちづくりや復旧・復興支援等の実体験を基にした防災研修プログラムを展開。被災時に現場指揮官が判断に悩む場面でどうかじ取りするかを疑似体験するプログラムなど平時の備えの重要性を示した。

 ▼賃貸管理の現場では、日管協が賃貸管理会社向けの「防災マニュアル」を発行。過去の大震災に向き合った事業者の経験を基に、災害発生前の事前準備から発生直後、復興期に至る、それぞれの時期に管理会社が行うべき対応を整理。作成の中心を担った荻野政男氏(イチイ代表取締役)は「災害が多発している今、管理会社は入居者の命を預かっているという意識を忘れてはいけない」とする。

 ▼気候変動やエネルギー供給、人口減少など向き合うべき課題は尽きないが、住まいに携わる業界は何を見据えていくべきか。建物・住宅の提供はもとより、それを活用・運用する人の意識などソフト面の対策の重要性は増す。迫る年の瀬。暮らしのベースとなる住まいの役割についてゆっくりと考えてみる時間を持ちたい。