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大言小語 「第四の壁」超える

 「第四の壁」という言葉をご存じだろうか? 映画好きなら、聞いたことがある言葉だと思うが、スクリーンの中と映画を見ている観客を隔てる壁に見立てたもので、元々は演劇で舞台側(虚構)と客席側(現実)を隔てる壁という意味を持っている。この壁を超えて、観客に話しかけてくる映画として有名なのが「デッドプール」だ。

 ▼「デッドプール」では、自分自身が映画のキャラクターであることを自認して、観客に話しかけてくる。そのほかのキャラクターは、さもなにもない空間に独り言を言っている変な奴くらいの認識で振る舞い、それがギャグの一つにもなっている。

 ▼「デッドプール」では、主人公の不幸な運命や出来事を笑い飛ばし、観客に悲壮感を与えないための手法として、「第四の壁」を破る。この映画では、人が死ぬシーンや暴力シーンが多く、不死身の主人公自身も、手足が平気で取れる。拘束から逃れるために、自分自身で手首を切るありさまだ。時間がたつと手首が生えてくる。

 ▼一連のジャニーズ会見でも「第四の壁」が破られたように感じる。メディアと視聴者・読者にあった壁はSNSによって取り払われ、メディアや当事者に直接声が届くようになった。是非はともかく、メディアに携わるものは意見される側に立ったことを自覚すべきだろう。その振る舞いが「第四の壁」を超えたギャグでは許されない。