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大言小語 木造ビルの可能性

 AQグループの新社屋「8階建て純木造ビル」が9月10日の上棟式を前にメディアに公開された。住宅用の流通材のみを採用し、一般的な木造軸組の在来工法で建築するという。来年4月の竣工に向け、宮沢俊哉社長は「コストの壁、工法の壁、偏見の壁を乗り越える」と意気軒高だ。

 ▼脱炭素化を目指す動きが強まる中、大手ゼネコンやディベロッパーはオフィスビルや商業施設の木質化に取り組み、中大規模の木造建築物は見直され始めている。国産材の活用や森林循環の構築、林業の活性化に炭素固定といった環境面からの必要性に加え、建物の軽量化やそれに伴う工期短縮も可能になるだろう。

 ▼木造ビルが一般的な工法や流通材で特殊な技術や金物がなくとも建てられるようになれば、戸建て住宅の建築請負に特化している一般工務店でもビルの建設を請け負えるようになるはずだ。新規事業領域への挑戦もしやすくなるのではないか――とつい期待してしまう。

 ▼とはいえ、耐火構造技術の開発や建築基準法への対応など、課題は少なくない。何より、現段階では割高になる。中大規模木造建築に取り組む事業者からは、「先進技術の開発は、許認可の壁が高く、オーバースペックになりがち。どこまで技術の研究がなされ、検証が進んでいるかも手探り状態だ」との声を耳にした。普及へのスピードアップの鍵は、やはりオープンイノベーションなのか。