総合

社説 空家等対策推進特措法改正へ 人材・ノウハウの官民連携を

 空家等対策推進特別措置法が施行され、これまでに全国市区町村の8割が空家等対策計画策定を完了し、策定予定も含めると9割超に上っている。同法の一部改正案も今国会に提出され、空き家対策の推進に拍車がかかってきた。

 自治体の具体的な動きも目立ってきた。京都市が、若者・子育て世帯の居住促進を目的に、土地・建物を対象とする「非居住住宅利活用促進税」を26年以降の導入を公表した。また市内の3%が空き家だという東京・福生市が、空き家解体工事一括見積りや解体後の土地売却査定価格の概算をウェブで把握したり、相談できるサービスの提供で、都内で初めて官民連携協定締結を発表した。

 しかし依然として全体の約6割の市区町村が人材不足や専門的知識の不足などの課題を抱えており、3分の1が空き家対策の業務をアウトソーシングしているという。区域を絞った重点的な対策や民間主体の活用、財産管理人の選任申し立て権の付与、緊急時の代執行や所有者探索の円滑化など制度的対応を求める地方自治体の声は高い。

 一方、業界民間企業41社を対象にした本紙アンケートでは、今後の空き家の増加は不可避という見方が支配的だ。しかしながら、空き家の事業化に着手(決定も含む)している割合は36.6%だったのに対し、事業化は考えていない割合も36.6%で見方が拮抗している。加えて「空き家や対策の定義が不明瞭」、「郊外分譲マンションの空き家は管理規約の制限と居住以外の用途が限られるため事業難易度が高い」「エリア単位での再開発やまちづくりを含めたストックの更新、再生が必要」、「地方の物件は行政による買取りもしくは流通スキームの検討」といった声が聞かれ、民間の事業化には収益性や成長性で多くの難題、難問が依然、立ちふさがっている。

 社会資本整備審議会の空き家対策小委員会が2月にまとめた提言や関係機関などの意見を踏まえた空家等対策推進特措法改正案は、所有者責任をより明確化すると共に、発生予防、利活用、適正管理・除却に至る空き家全包囲型の対策推進が狙いだ。空き家の責任の所在は所有者にあるが、その空き家所有者を支えることは、国内の住宅のほとんどを供給あるいは建築許可した国・自治体、住宅事業者の責務と捉えたい。多様な発生要因が背景にあるだけに、引き続き関係者・機関の声を丁寧に吸い上げ、対策に反映していくことが重要だ。30年時点で470万戸に増加が見込まれる居住目的のない「その他空き家」を同400万戸に抑制することが住生活基本計画に掲げられている。この実現には民間住宅事業者の関与が不可欠であり、収益性にも配慮しつつ、持続可能な社会に向けて、自治体は対策を推進し、その受け皿となる民間の人材・ノウハウの活用と官民の連携に期待をしたい。