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大言小語 月を見た今年

 12月を迎えた。今年は442年ぶりだという「皆既月食」と月が天王星を隠す「天王星食」との同時発生(11月8日夜)も家の近くで見た。次回数百年後にこの天体ショーを見るのはどんな人たちだろうか。今住んでいるこの町はどうなっているのだろうか。

 ▼「今年の重大ニュース」を選ぶ時期になった。いつも思うのは、各分野で仕事をしている人たちにとって仕事の重みは同じはずだが、私たちはちょっと上から目線で重大ニュースを選び出している。もっとも今年はロシアによるウクライナ侵攻という事態が起き、世界的に見れば間違いなく今年最大のニュースになるだろう。ただ、日本でも今年コロナで生活の糧を失ったり、住む所を追われたり、家族を失った人もいる。そう考えると世の中の物事には元々重大さのランキングはないのではないか。

 ▼地球環境に目を向けると、昨今〝生物の多様性〟に対する関心が高まっている。一方で「多様性はなぜ必要なのか」という素朴な質問も多いという。例えば深海に生息する珍しい種が一つ消えてしまっても問題ないのではないか。

 ▼ある専門家は「多様な生き方をしている生き物への愛着を失うことは、多様な価値観を持った人間への尊厳を失うのと同じ」と話す。今の時代を生きている人間は、数百年後に生きることになるかもしれない人たちへの愛情も失ってはならないということか。