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本紙創刊75年・ウェブ版リニューアル記念 テック信仰ではなく現場力 「Web3.0がもたらす住宅・不動産の未来」

 投資(物件オーナー)、賃貸、売買、不動産テックの各分野から登壇し、見解や思いを交わすオンラインイベント『Web3.0がもたらす住宅・不動産の未来』が10月3日に開催された。IT企業大手に集中していた情報を個人で管理して、インターネットが一層〝民主化〟される「Web3.0」時代に生き残る住宅・不動産業の姿を考えた。本紙創刊75年・ウェブ版リニューアルを記念して住宅新報が主催した。

 当日は、パネルディスカッション形式で進行した。不動産投資の解説動画などのSNSサイト「もふもふ不動産」を運営する投資家の、もふ氏や、マンガ「正直不動産」のモデルともいわれる鈴木誠氏(誠不動産)、不動産テックサービスを提供する針山昌幸氏(Housmart)、収益不動産事業などを展開する渡丸優生氏(エー・ディー・ワークス)が登壇し、4つの論点で意見を交わした。

SNSの活用で

 脱・不動産ポータルサイトの動きが加速し、個社の情報発信方法で注目されるSNSや動画配信サービスの活用について、各氏の発言の要旨として、「不動産スタッフの人柄が伝わり、フラットな関係性をつくりやすい。消費者が本当に知りたい情報を分かりやすく提供できる。一方で、注目を集めたい目的のためだけの間違った嘘の情報も散見される」と指摘。もふ氏は、「受け手側には情報の精査が必要となる。事業者側も、登録者数の増加を求め過ぎれば、本来の伝えたいことができなくなる。何を強みに訴求するかを考え、楽しく続けることが結果的に訴求力を高める」と説明した。

嘘がなく、正直に

 嘘のない正直な不動産業務の遂行のために、各氏の発言の要旨として、「多忙や知識不足から嘘のつもりがなくても、間違った情報にはなりうる。企業側の日々の学びが不可欠」と指摘。鈴木誠氏は、「嘘をつく仕事は、仕事ではない。消費者はすぐに感じ取る。本人も日々が後ろめたいはず。良いことだけでなく、リスクも正直に伝える。真摯に対応し、相手の幸せを一番に考える。企業はゴールでも消費者は契約からスタートして、新しい暮らしが始まる。責任を持って見届ける覚悟が必要となる」と説明した。

広がる女性の活躍

 不動産業務では今後、多様な人材、特に女性の活躍が欠かせず、各氏の発言の要旨として、「業務の実績を可視化し、性別に関係なく適正に評価する。男性だけに偏らず、女性視点も取り入れれば、消費者に安心感が生まれる。優秀な女性人材の働く〝機会損失〟を招かない工夫が企業に必要になる」と指摘。渡丸優生氏は、「可能性を広げる取り組みを企業が設ければ、女性も活躍しやすい。女性たちが自身を磨きつつ、最新デジタルツールを活用すれば、効率化だけでなく働き方の自由度も高まる」と説明した。

人の働きが一層重要

 各社、個人が最新デジタルツールを使いこなす時代となり、未来の住宅・不動産業界について、各氏の発言の要旨として、「法規制があり、蓄積がなく、十分に生かしきれていない不動産データを活用できれば、手続きの履歴やブロックチェーン(分散型記録台帳)技術などで権利が明確に適正に保全される。属人性を排したチーム戦略を発揮できる。リアルとデジタルの融合で新たな価値を生み出していく不動産業界に変貌する。その一方の危機感として、最新デジタルツールの活用の有無や習熟度で企業間の格差が広がる」と指摘。針山昌幸氏は、「テックサービスも結局は、仕事を助ける道具でしかない。過度な導入は逆に非効率となり、業務に合う手段を選ぶことが大切。人ならではの業務でデジタルは代替えできない。最終的な解釈は人間であり、不動産エージェントの仕事は、より一層重要になる」と説明した。