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大言小語 安全への意識は変わるか

 7月10日に参議院議員選挙が行われ、与党の盤石な体制が当面の間続きそうな結果となった。しかし、国内外の注目は別のところに向いている。参院選投開票日の2日前に起きた、安倍晋三元内閣総理大臣の銃撃事件である。

 ▼戦後では初めてとなる総理経験者の殺害事件であり、民主主義の根本から選挙の方法論、経済情勢、現代社会の孤独と支援、あるいは宗教など、様々な観点から激しく意見が交わされている。そうした中で、不動産業界の視点からは、セキュリティのあり方を改めて考えさせられる面もあったのではないか。

 ▼安倍氏への襲撃は屋外での出来事だったが、事件の背景や容疑者の人物像が明らかになるにつれ、「京都アニメーション放火事件」(19年)や「大阪心療クリニック放火事件」(21年)との構造的な類似性が指摘されている。これらの事件は築古、特に既存不適格の建物の、火災や犯罪に対する脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしたことでも知られる。

 ▼これまで国内では、建物の安全性といえば「耐震性」と「(構造面の)耐火性」が重視されてきた。しかし、こうした重大事件が人々の意識を変えることは多い。高経年ストック更新の動機として、「耐震」「耐火」に加えて「防犯・避難」の存在感がより高まっていくのか。明るい話ではないが、不動産ニーズへの変化の一つとして注視していく必要があるかもしれない。