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森ビル「パレットタウン」今夏、23年の歴史に幕 都やトヨタGなどと新たなにぎわい創出 スポーツ・エンタメ拠点整備へ

 森ビルが運営し、1999年3月に開業した「パレットタウン」(東京都江東区青海)が今夏、営業を終了し、臨海副都心エリアを観光スポットとしてけん引してきた歴史にいったん幕を閉じる。今後、新たな施設の開発が行われる予定。「現時点では未定」(森ビル)だが、このエリアは、東京都によるベイエリア構想「東京ベイeSGプロジェクト」の対象だ。同構想では、5G通信基盤の実装のほか、有明地区や青海地区にスポーツ・エンタメ拠点を整備する方針が示されている。同社は、都などと開発の具体化に向けた協議を続けている。「パレットタウン」の未来を探る。

 「パレットタウン」は、昨年12月にモビリティの体験型テーマパーク「MEGA WEB」、1月1日にライブハウス「Zepp Tokyo」がそれぞれ閉鎖。3月27日には商業施設「VenusFort」が、8月31日には大観覧車と「EPSON teamLab Borderless」が営業を終了する。こうした中で、次の姿も徐々に見え始めている。

 「パレットタウン」跡地の再開発として、トヨタグループの不動産企業・東和不動産は、延べ床面積約3万7000m2の大型複合アリーナを建設する計画を公表している。スポーツやイベントなど多目的ホールとして計画しており、収容人員はスポーツで約1万席、イベントなど約1万~1万3000席で、竣工は25年6月を予定。にぎわいや魅力づくりに貢献するとしている。

 「パレットタウン」から、橋を渡った対岸エリアである江東区有明三丁目エリアでは、コナミホールディングスなどが、eスポーツなどに使われる動画配信スタジオや、自社の研究開発拠点などを25年に整備。テレビ朝日が多目的ホールやイベント・エンターテインメントスペース、スタジオ、オフィスなどを24年に整備し、にぎわい・文化発信拠点とする計画だ。

魅力向上のきっかけ

 「パレットタウン」開業前であった95年の臨海副都心エリアは、都市博が中止になり、広大な土地が広がっていた。「パレットタウン」の開発に当たっては、都心部からの直線距離が近いまとまった未利用地に「東京の魅力向上のきっかけになる場」(森ビル)となるポテンシャルを見いだしていた。03年の六本木ヒルズ開業を前に、商業施設のノウハウを多角的に得ておきたいとの思惑もあった。

 1999年の開業当時は、交通アクセスが未整備で、集客に課題があり、インパクトがある商業施設として「VenusFort」を整備。体験を提供するラスベガスのテーマパーク型商業施設をモデルに、中世ヨーロッパ風の街並みや内装デザインなどを取り入れた。

 「パレットタウン」をきっかけに周辺開発が進み、「VenusFort」の開業22年で臨海副都心エリアへの来街者が年間5580万人に膨らんだ。栗原弘一執行役員(営業本部商業施設事業部)は、「多くの人を惹き付ける『磁力』を生み出すことに成功した事例」という。

 東京都の「東京ベイeSGプロジェクト」では、臨海副都心エリアを、30年までに「空間的広がりを活かしたデジタル都市」の実現を目指す。そのために、(1)5G通信基盤の実装、実証フィールドとして都有地を提供、(2)ビジネス、交通、医療などの分野で革新的なサービスを提供、(3)スポーツ、ライブエンターテインメントの拠点を形成――の3点に主に取り組む。

 同社も都と協議しながら、トヨタグループやコナミ、テレビ朝日などと共に、このエリアの実証やエンタメを中心としたまちづくりに貢献する開発を行う方針だ。