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大言小語 トリキの錬金術

 「トリキの錬金術」は人気漫画のタイトルをもじったものだが、10月から始まった「GoToEatキャンペーン」が早くも制度上の不備をあらわにした。

 ▼指定サイトで予約したディナーに対して、1000円分のポイントが付与される。居酒屋チェーンの鳥貴族で席のみ予約をして、300円程度の焼き鳥1品のみを注文して会計。近隣店舗をはしごすれば、一晩で数千円分の差額がポイントで手に入る。

 ▼この行為に違法性はない。しかし、政府は事前にこの不備を把握していた。報道によれば、1000円未満でのディナーの利用は広がらず、飲食店側も対策を取ると想定していたと言う。テレビなどで批判的な報道が相次いだため、10月8日時点で、政府は店舗側に対策を求める事態となっている。

 ▼お粗末な対応と言えるが、笑って済ませられない重大な問題をはらんでいる。制度上の不備を予見していたにもかかわらず、それを軽視して対策を怠った点だ。利用者のモラルを問うても、制度の不備は直らない。

 ▼日本経済が競争力を失った本質はここにあるのではないか。問題点を認知していても、保身や根拠のない期待、怠慢により放置し続けた結果、対応が後手に回り、世界との競争に負け続けた。そして、過去の蓄えを切り崩し続けてしのいできた。今、その余裕はない。まずは、それを自覚することから始めるべきだろう。