総合

大言小語 人間について

 戦争や人種差別をやめない人間は種として賢いのか愚かなのか。個としての人間を見ても〝意地〟なのか〝志〟なのか分からない頑迷さがある。  

 ▼人類とコロナとの戦いはまだ終わっていない。ただ、もしかしたらコロナは人類を新たな価値観をもった社会に導いてくれるのかもしれない。それは今よりも、より多くの人が幸福になる社会であってほしい。それこそが人類の進歩だからである。

 ▼新型コロナの感染拡大が世界同時不況を招いている。経済成長の原動力だったグローバル化やサプライチェーンが裏目に出た格好だ。そこで世界各国の中央銀行が一斉に無制限の金融緩和に踏み切った。ただ、史上最大の財政支出は将来どう帳尻を合わすのだろうか。「今は財政健全化などと言っている場合ではない」という某閣僚の発言には驚いた。

 ▼人類はそろそろ新たな経済システムに移行するしかないのではないか。これまでは効率や生産性を極限まで追求し、ゆとりがなさすぎた。この先、どんな災禍が人類を襲うか分からない。どんな災禍に見舞われても、乗り越えられる余裕を持つべきだ。

 ▼豊臣秀吉の茶頭となって最後は切腹を命じられた千利休の号は「利を休む」と書く。鋭い利は命を縮めるという戒めである。利休はそれを十分に分かっていながら、美の追究をやめることができなかった。分かっていてやめられないのは人間の業(ごう)とも言う。