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大言小語 哀しみに耐える心とは

 日本の伝統的合言葉である「山」と「川」が、一夜のうちに多くの人の命と大切な家を奪い去った。昨日まで暮らしてきた家が流され、圧しつぶされ、跡形も無く消え去ってしまう――そうした突然の〝喪失感〟に襲われる人々の光景が、特に東日本大震災以降多くなってきているように思う。今後30年以内に約7割の確率で発生するといわれる首都直下型地震が現実に起こった時、この国はどんな光景を目の当たりにするのだろうか。

 ▼それでも国は立ち直らなければならない。そのための経済力も気力も日本人の心が生み出すしかない。その心とはなにか? それは突然襲ってきた〝喪失感〟を自らの人生の中で俯瞰し、時間を掛けて受け止めるしかないと悟る成熟した心である。

 ▼7月10日と11日の2日間、「住まい×介護×医療展」が東京ビッグサイトで開かれた。高齢者の生活を支えるそれぞれの分野から、約160の企業が出展した。日本の超高齢化は今後一段と進む。あたかもそれに歩調を合わせるかのごとく、日本が〝災害大国化〟し始めたのは運命の悪戯だろうか。

 ▼今こそ、高齢者の心に寄り添い、高齢者からも学ぶ謙虚さをもった人間性豊かな産業の台頭が求められている。なぜなら、どんな哀しみをも乗り越えていく心の成熟は人生が終焉に近づくに連れ、その深みを増していくものだからである。