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大言小語 ヒーローはそばにいる

 年も押し迫ったこの時期に国民栄誉賞の授与を検討するというしらせが入ってきた。その対象は、将棋の羽生善治竜王と囲碁の井山裕太七冠。二人ともこのコラムに何度か登場している。

 ▼羽生竜王は先頃、竜王に復位し、一定期間タイトルを保持すると名乗れる永世タイトルを将棋界のタイトルのうち七冠で獲得した。分かりやすくいえば、「永世七冠」だ。井山七冠は、囲碁界の7大タイトルを制覇した七冠で、そのうちの名人こそ失ったものの、その他すべてのタイトルを防衛した上で、名人も取り返した。つまり、七冠を2回経験した。いずれも史上初めてのことで、それが評価されたという。

 ▼国民栄誉賞は内閣総理大臣表彰の一つで、国民に愛されたヒーローに与えられるものだ。ともすると、内閣の人気取りとなる面もある。しかし、今回は将棋、囲碁をよく知らない人でも首肯できるのではないか。

 ▼そんな賞を辞退する人もいるというのだから、世の中は広い。そのうちの一人が野球の福本豊。盗塁世界記録を達成したが、「そんなんもらうと立ちションもできへん」と名(迷)ゼリフを残して辞退した。住宅・不動産分野でも田中啓一賞など名だたる賞はあるが、賞を取らなくても、新しい発想などにより、この分野の発展に貢献した人たちはたくさんいる。福本氏ほどの気概はなくとも、人に知られなくとも、その活躍は心強い。