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大言小語 訓練は最大の備え

 訓練は最大の備え――防災関係者の言葉である。その積み重ねが命を守る。関東大震災のあった「防災の日」は、各地で防災訓練が行われた。政府・自治体が主催するものから、子どもやお年寄りも参加する町会やマンション管理組合レベルまで様々だ。より実践として役立つのは多くの人が普段着で参加できる、地域の訓練である。

 ▼20年ほど前までこの日に政府が行っていた大掛かりな防災訓練は、今から思うと現実離れした、不毛なものだった。東海地震が発生するという想定のもと午前8時前、緊急対策を検討するため関係閣僚や地震学者らが続々と車で首相官邸に駆け付ける――。緊急車両が走り、ヘリが飛んだ。地震が予知できるという誤った学説の「地震予知神話」がもたらしたものだ。ちょうど米国が「地震予知は不可能」と結論を出した頃の対照的な対応だった。

 ▼阪神淡路大震災、新潟中越地震、東日本大震災、そして熊本地震。いずれも大地震発生確率は低く、むしろ「安全度合いが高い」とされていたエリアで、地震予知が不可能なのは明白だ。東日本大震災で地震学者の多くが発生を予見できなかったことを悔いたが、熊本地震でも知見は生かされなかった。

 ▼今では「全国、いつどこで大地震が起こっても不思議ではない」が常識となった。想定外のことも想像しながら、防災訓練を積み重ねる。これが災害への備えであることを改めて肝に銘じたい。