政策

社説 中古市場拡大の狙いは 具体的成果に期待高まる

 国土交通省はこのほど、中古住宅流通市場活性化策を継続させるため、モデル事業推進団体として改めて17団体を指定した。13年度は14団体が活動していたが、既存協議会の再編、さらに新規採択が4団体あった。同省は12年度から同推進事業を実施してきている。3年目となる今年度は、いよいよ具体的な成果が期待されることになる。

 中古市場拡大の狙いは何だろうか。中小宅建業者によるストックビジネスの創出、住宅の長寿命化による環境問題への対応、住宅資産価値の維持など多々あるが、その優先度を考えることも、具体的成果物を生み出すために必要ではないか。

 日本人の新築志向は根強い。それはそれで、ことさら否定する必要はない。住宅の取得を〝晴れの舞台〟ととらえる、日本人の瑞々しい感性がそこにあるからだ。

 だが、その一方で中古住宅を取得し、その古さを風情としながら、自らの感性で手を加え、自分だけの住まいを実現したいというニーズも高まりつつある。

中小業者を支援

 「コンサル型仲介」など、中小宅建業者によるストックビジネス創出を第一義と考えるなら、新しさよりも、むしろ〝古さ〟に魅力を感じる新感覚の顧客ニーズに対応できる人材育成こそが求められているのではないか。そうした新たなトレンドを生み出す役割が中古市場にはある。

 所得低下が予想される若年世代のために「新築よりも価格が安い中古市場を整備する」という観点は後ろ向きであり、新しいビジネスの創造には結びつきにくい。だいいち、市場透明化で中古の不安を解消させることができると新築との価格差は縮小していくという〝中古のジレンマ〟が控えている。

 一方、最近の新築市場では情報通信技術(ICT)を駆使したスマート住宅が脚光を浴びている。ただ、そうした住宅の家電化よりも、周辺の自然環境や住民の暮らし、文化などを最優先する「伝統的顧客層」がいることも忘れてはならない。中古住宅をあえて解体せず再生して使おうとする意志は、地域の景観や伝統、コミュニティーを守っていく心とつながる。かつて、その家を建てた地元工務店との連携も必要になるだろう。

 中古再生は地域の力を結集させることでもある。その情報発信基地になれるのは、永く地元に根をおろしてきた中小不動産会社こそである。

 中古市場拡大の最終目的は「資産価値の維持」という見方もある。資産価値を支える最も重要な柱はコミュニティーだ。新築はそれを一からつくっていかなければならないが、中古なら既に見えている。まさに存在が実績となる。 ただし、コミュニティーの質をどう図るのか。建物の評価基準改定よりも難しいテーマである。