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大言小語 子供の声を嫌がる社会

 電車で子供が泣いていると、確かにうるさいが、とがめることもないと考えるのが普通だと思う。だが、公共の空間で子供の泣く声がうるさいなどとクレーマーよろしく、施設の管理者に文句をつけるケースが増えているという。最近は、ある作家が飛行機内で泣き止まない赤ん坊に怒り、航空会社にクレームをつけたことがネットで話題になり、顛末を書いたコラムが〝炎上〟した。

 ▼飛行機は気圧が変わるので、幼児にとっては常に違和感を感じるという。とは言え、専門家によれば乗せて悪いということはなく、大人が起きやすい航空性中耳炎も赤ん坊だと起きにくいとのこと。観光旅行はいかがなものかと思うが、転勤等で乗らざるを得ない場合もある。問題はなぜそこまで子供の泣き声を嫌がるか、だ。

 ▼核家族化が進み、防音性の高い個室に暮らす人が多くなり、赤ん坊の泣き声に慣れていないということもあろう。「失われた20年」で、貧困化が進み、心の余裕がなく「泣きたいのはこっちだよ」と思う人もいるのかもしれない。

 ▼東京世田谷区では、保育園の園庭で遊ぶ子供の声がうるさいというケースがあった。保坂展人区長は、「遮音のために運動会を体育館でやらせるような時代に正面から向き合う」と、解決策を探っている。体調が悪くて泣く子供もいよう。そうした声にまで耳を塞ぐのは、自らが病んでいることの証だろう。