Pick Up!
- YKKが株式取得でパナソニックGの住設・建材会社を傘下に
- 旭化成不レジが麻布十番の築50年超マンションを建て替え、竣工
- 三井不が神戸市で「都市OS」活用、渋滞解消で街づくり貢献
1週間のランキング・トップ10から記者が気になる記事を3つピックアップしていきます。
最初にご紹介するのは、2位の「パナソニックHD、YKKに住設・建材事業会社の株式を譲渡(2025/11/19配信)」です。パナソニックホールディングスが、グループの住宅設備・建築資材会社パナソニックハウジングソリューションズ(PHS)の株式の80%をYKKに譲渡するというニュース。業界大手のグループ企業買収・再編・提携等の記事は総じてランキング上位に入りますが、今回も例にもれず多くの注目を集めました。今回はYKK側がパナソニックGの子会社を買収する形ですが、社名変更は行わず「パナソニック」ブランドも引き続き使用。また、パナソニックも引き続きPHS株式の20%を保有し、両社が共同してPHS事業の経営を行う体制とする意向であり、方向性としては住設・建材領域における両グループのパートナーシップ構築を図る狙いと考えられるでしょう。背景には、国内の新設住宅着工戸数の減少傾向が続く一方で、リフォーム市場は拡大し、断熱・省エネを始めとした住設・建材性能へのニーズは高度化するという市場環境の変化があります。両社の強みと事業規模を融合することで、総合的な競争力強化につなげる方針です。更に、公表資料では言及していませんが、両社のシナジーによる海外事業展開の強化も見込んだ動きであることが想定されます。国内事業環境の変化が続く中、住宅供給や不動産開発の業界はもちろん、住設・建材業界でも同様の動きは続いていくことでしょう。
次に、5位の「麻布十番の建て替え34戸が竣工 旭化成不レジデンス(2025/11/19配信)」です。「マンション建替え円滑化法」に基づく建て替え件数が国内首位(24年4月時点、同社調べ)で、高経年マンションの再生では業界トップクラスの実績と知見、知名度を誇る旭化成不動産レジデンスが、東京都港区麻布台の築54年・全18戸の物件を建て替え、竣工しました。マンション再生については、今年5月成立の法改正により決議要件緩和等の措置が図られましたが、以前から合意形成の難しさが大きなボトルネックとなっています。加えて、近年は事業コストの上昇もあり、容積率規制の範囲内で一般販売用住戸を確保することも容易ではなく、多くの老朽化物件の管理組合が悩んでいることでしょう。そうした中で同社は、これまで培った合意形成力や規制緩和の活用ノウハウを生かし、今回の建て替えを実現しました。同法改正も含め、マンション再生は社会的な要請と共に事業を後押しする政策も強まっていく傾向にあり、業界にはこれまで以上に力を入れていくことが期待されます。
最後に、少し離れて10位にランクインした「三井不動産など 『都市OS』で神戸市内の渋滞解消へ(2025/11/20配信)」をご紹介します。三井不がITサービス会社と共同開発し、20年から「柏の葉スマートシティ」(千葉県)で運用・実証してきた「都市OS」を活用し、神戸市の都市課題解決を図るという取り組みです。不動産ディベロッパーが「ハコ(建物)をつくるだけでなく、街づくりに携わる事業者」であることは業界内外に広く知られており、実際に公共空間の整備やエリアマネジメント、自治体との連携による地域価値向上などを手掛ける事例は数多く見られます。中でも今回のケースは、最先端のデジタル技術を街づくりの具体策に落とし込むという、デベだからこそできるDXの好例と言えるでしょう。デジタル技術は日進月歩ですが、それをどのように現実の課題解決に結びつけるかという点において、住宅・不動産関連事業者の知見を生かせる余地はまだ豊富に眠っていることでしょう。業界各社には、自社の研究開発等ももちろんですが、ぜひ他のテック企業やその技術の動向を精査し、連携・協業による新たな取り組みにつなげていってほしいところです。




