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日本木造分譲住宅協会が発足 木造分譲住宅事業を通じSDGsに貢献

国産材の安定供給へ
国内の森林活用を進め、水災害を抑止

 同協会は、三栄建築設計の小池信三社長が理事長に就任し、オープンハウスの荒井正昭社長、ケイアイスター不動産の塙圭二社長が理事にそれぞれ就任した。事務局は、三栄建築設計本社内(東京都新宿区西新宿)に置いた。
設立会見で小池理事長は、「建売業界として、日本の森林、脱炭素化に向けて取り組みたい」と話しており、今回の参加企業の募集は、同協会の活動を業界全体の活動として広げていくための第一歩となる。

持続可能な国産材供給の仕組み構築

 同協会の当面の活動の柱となるのは、大きく2つある。一つは国産材の安定供給の仕組みを構築することであり、もう一つは植林や林業の担い手の育成といった森林資源を次世代へつなぐための活動だ。これにより国産木材を「切る」、「使う」、「植える」という循環が生まれ、林業再生による地域創生の効果も期待できる。

 では、国産材の安定供給の仕組みは、どのようなものなのか(「これから目指す流通モデル」参照)。山・森林組合から切り出された木材は、集成材工場・製材工場に運ばれて加工される。通常であれば商社や問屋などを通じてプレカット工場に供給されるが、流通ルートが複雑になり、コストも高くなる要因となっている。

 そこで、非営利団体である同協会が会員企業から情報を集計し、着工予定数量を集成材工場・製材工場に定期的に配信する。これにより、計画的に集成材・製材の生産が可能となり、国産材を安定的に供給する仕組みとした。
また、供給の安定、価格の安定に加え、トレーサビリティの確保も仕組み構築の目的の一つだ。どの山から、どの工場から、いつ出荷された木材か、などの情報を記録することで、木造分譲住宅購入者も安心して国産材を使用した住まいを取得することができる。

 植林については、同協会で1年間に伐採した分を植える活動とする。同協会は山や森林組合と協力し、会員企業が植林活動に参加可能。伐採量が判明する来年から活動が本格化することになる。また、担い手の育成という点からは、新たな林業就業希望者の教育などを検討している。

理念への賛同を重視

 偶然にも、ウッドショックと重なったため、国産材の安定供給に対して参加を検討する企業の関心が高くなるのは当然だが、それ以上に重要なのは「木造分譲住宅で、サステナブルな世界を実現するために。」という理念への理解と賛同だ。

 国産木材の供給安定の仕組み構築というだけであるならば、3社が共同で株式会社を設立すれば目的は達成できる。理念を実現することを重視するからこそ一般社団法人としての発足であり、広く〝仲間〟を集う理由がそこにある。そのため、応募事業者の規模や、注文住宅企業、不動産などといった事業分野を問わない。その代わりに、面接をして、その企業の考え方や協会の理念、活動への理解を確認する。時節柄、国産材供給の面に着目されがちだが、それは目的を実現するための手段にすぎない。

 設立の経緯を探ると昨年10月までさかのぼる。近年、自然災害の激甚化により全国各地で河川の氾濫が頻発するようになった。その原因の一つが森林資源の未活用によるものだ。

 数年前に、多摩川の氾濫で住宅が浸水したエリアで事業をしていたこともあり、小池理事長は「地域社会のおかげで、会社が大きくなった。何か建売住宅で社会貢献ができないか」と感じたと言う。

事業分野や規模問わず参加
SDGs取り組み企業に

 日本の国土の約7割を占める森林は、伐採期である樹齢50年以上の木が半分以上を占めている。外国産材に押され、国産材の利用の低迷で林業が衰退し、木材が伐採もされず、新しい木が植えられることも減った。その結果、森林の二酸化炭素の吸収力が低下し、保水力も低下。大規模な水害が発生しやすい状況となっている。

 こうした状況への危機感がきっかけとなり、理念に共感した企業3社(三栄建築設計、オープンハウス、ケイアイスター不動産)が集まり、住宅事業を通じて、課題を解決するために同協会が発足されることになった。また、環境への関心の高まりや政府の脱炭素化への動き、更にSDGsの課題への対応といった社会的な変化も、同協会の設立背景の一つとなっている。

森林活動でSDGsの14目標に貢献も

 規模の大小を問わず、SDGsを気にかけていない企業はない。森林活動は、SDGSの17目標のうち、14目標の達成に寄与するとされている。同協会の活動に参加することで、住宅事業を通じて森林循環に配慮した活動に貢献でき、企業としてSDGsの目標達成に寄与することができる。同協会の事務局は、「参加企業は、SDGsへの取り組みを行っている企業としてアピールすることができる」と話す。

 SDGsへの関心はあるが、具体的に何をすればいいのか分からないという悩みを抱える企業にとって、同協会の活動に参加することで自社のSDGsへの取り組みを実現することが可能だ。また、1社では不可能な規模の活動に参加できるメリットもある。

 同協会では、情報発信として森林に関するセミナーを開くことも検討しており、循環型社会の実現に向けた同協会の活動への理解を広めていく方針だ。