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効率的な学習法を身につけスキルアップ【不動産資格特集】

◇裾野の広い不動産資格

 不動産業界には、数多くの資格がある。宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者の3大国家資格を皮切りに、その他の民間資格が目白押しである。

 例を挙げれば、マンションリフォームマネジャー、相続診断士、不動産仲介士、競売不動産取扱主任者、土地活用プランナー、賃貸不動産経営管理士など、実にバラエティに富んでいる。

信用を高める

 これだけ多くの資格が存在しているということは、それだけ不動産の裾野が広い、ということに他ならない。国家資格の他に、これらの資格の一つでも持っているとなると、あなたの信用は、いやましに高まるに違いない。

 一般的な不動産の知識だけでなく、相続にも強い、あるいは競売不動産の目利きができるとなると、顧客にいろいろな選択肢を提供できる。「それは専門でないので、調べてからお返事します」というのとは、明らかに差がつくのだ。

 だが初めは、そこまで達することは難しいかもしれない。そこでまずは、一つの国家資格を狙ってみよう。これを取るだけで、あなたの仕事ぶりは違ってくるし、周りからの信用も違ってくる。資格を一つ取れば、自分では気づかずとも、今まで以上に幅のある提案ができる。専門化した知識を身につけることで、深みのある提案もできる。これらが、相まって、顧客からの信頼度が高まるのだ。

◇ハロー効果に恵まれる

 資格の効用の切り札は、〝ハロー効果〟である。〝ハロー効果〟とは、ある一つのことに優れていると、他の優れていない分野についても、優れていると錯覚してしまうことをいう。つまり、宅建士の資格を取り、名刺に刷り込んでいると、不動産全部に知悉(ちしつ)していると思われることだ。

 そうなると、「これは少し微妙なところがあるので、時間をください」と即答を避けても、「あの資格者が言うのだから、微妙なのだろうな」ということで済んでしまう。

 テレビのコメンテーターには、ときどきこの〝ハロー効果〟を悪用して、自分の不得意分野は曖昧なコメントをして、やり過ごしてしまう人を見かけたりする。これは、キャスターの方にも科がある。弁護士に国際金融の話を求めても、土台無理なのだからだ。テレビなどで、弁護士などが良く使われるのには、こうした裏事情もあるようだ。

◇試験突破の3手法 「高島式3回転学習法」

 資格を取得することで、どういう世界が広がるかはわかったが、一にも二にも、試験を突破できなければ、話にならない。そこで、効率の良い勉強法が問題になる。しかし、勉強法といえば、1冊の本ができるほど内容がある。ここでは、もっとも重要な一つの技術だけに絞って紹介しよう。

 それは、私がどんな本でも必ずお勧めしている「高島式3回転学習法」だ。この方法では、テキストに対して、3回違った方法でアプローチする。

 最初に本やテキストを読む場合は、まず全体を把握することが大切。これには、「サラブレッド学習法」が最適である。

◇ひたすら読み進む  全体把握は「サラブレッド学習法」

 「サラブレッド学習法」は、競走馬のサラブレッドの例えで、私が作った言葉。サラブレッドは、競走馬の宿命で、レースがスタートするとゴールまで目もくれずに疾駆する。このように、読み始めたら、ただひたすらに読み進めて、一刻も早くゴールを駆け抜けるのが「サラブレッド学習法」だ。

目的は内容の理解にあらず

 この段階では、内容の理解が目的ではない。したがって、途中で疑問を感じたりしても立ちどまらず、早く読み通してしまう。「サラブレッド学習法」を、テキストの読み初めに置くのは、まずは全体像を朧げながらも把握するためだ。このように学習を始めることで、およそ次のことが、わかってくる。

①これから勉強する科目の内容
②その難しさ、やさしさの程度
③自分の実力と比べてどうか
④全体の構成や構造は、どんな仕組みになっているのか
⑤個々の知識は互いにどんな関係に立っているのか

 以上の、ざっとあらましがわかれば、それでいい。(図1)

◇反芻して読み解く   本番に「ブル学習法」

 さて、2回目は、「ブル学習法」を行う。実は、この段階こそが勉強の本番で、これにはかなりの時間配分をしたい。この語も私の造語で、英語のブル、つまり雄牛のこと。英語では、株式の強気の相場を示す言葉でもある。牛は、馬と違って、動作がのろのろしているので、こう名付けた。

スピードは二の次

 スピードは二の次で、じっくりと繰り返して読み込むのが、この段階の特徴。内容をしっかりと理解し、要点を頭に詰め込むわけだ。
 具体的には、
①テキストをよく読んで、内容をとことん理解する
②もし、理解できない箇所があれば、調べあげて疑 問を氷解させる
③それとは別に、重要なポイントをマークする(マーキング)
④いずれ暗記しなければならなくなる項目はカードに書き出すか、スマホに 吹き込む

繰り返し理解する

 牛は、「反芻行為(ハンスウコウイ)」という特有の消化行為をする。一度飲み下した食物を、ふたたび口の中に戻して噛む。この行為が2回目学習の姿とそっくりなのだ。つまり、一度脳の中に入れた知識を、何度も取り出してきて理解し直すわけである。(図2)

◇重要ポイントをたたき込む 記憶に徹する「記銘学習法」

 3回目の学習は、いよいよ重要ポイントを、脳のなかに本気で押し込む「記銘学習法」である。記銘とは、「記憶」し、「刻みつける」という意味である。(図3)

要点の復習に絞る

 この段階では、テキストの全文を読んではいけない。すでに拾い上げられた事項を復習することだけにしぼる。重要な箇所には、2回目の「ブル学習法」の時に、すでにマーキングが刻印されているのだから。マーキングの箇所だけ、拾い読みして、万一忘れかけている箇所があったら、その部分にしぼって全文を読み直せばよいのだ。

 これは、理解の浅かった部分を補う行為でもある。なぜなら、忘れている原因は、たいていよく理解されていないからなのだ。記憶できている、できていないというよりも、そもそもその前段階の「理解」ができていないことがほとんどなのだ。

 以上が、「高島式3回転学習法」のあらましだが、私は、この方法を駆使して、多いときには、年に10もの資格試験を突破してきた。実績に裏打ちされた勉強法なので、ぜひ採用していただきたい、と思う。(図4)

◇〝説得〟ではなく〝納得〟

 さて、資格を取得したら、次はその活かし方である。これを考えてみよう。この場合、2つの道があるのではなかろうか。一つは、取得した資格の知識を前面に立てて、知識で勝負する方法だ。これは、中小企業診断士や社会保険労務士、税理士のような、知識で勝負するタイプの資格には向いているかもしれない。

 しかし、宅建士のような、わりあい合格率が高い資格の場合は、あまり前面に押し立てるのは、どうかと思う。営業の世界には、「お客様を説得しようとしてはいけない。納得してもらえばよいのだ」という鉄則がある。
つまり、「人間には情と理があり、このうち優位に立つのは情である」という考え方だ。

 初心のうちは、ともあれ相手を説得しようと夢中になりがちだ。だが、ここはグッとこらえて、まず相手の話に耳を傾けよう。

◇相づちで聞き上手に トップパーソンの共通点

 トップ営業パーソンの多くに共通している傾向がある、という。それは、その人たちの多くが「聞き上手」であり、決して「話し上手」ではないということだ。

 人は、誰でも、自分のことを語りたいという欲求を持っている。そこに照準を当てるのだ。特に社会的な立場の高い人ほど、これまでの自分の苦労やどうやって苦境を乗り越えてきたかなどを語りたがるものだ。上手な聞き役に徹する最良の手段は、「相づちを打つこと」だという。よく使う言葉は「なるほど」「そうですね」という肯定的な相づちだ。そして、相づちの高等技術は、相手の話したことを繰り返すことだという。

 人は、自分を受け入れてくれる人に対してのみ心を開く。あなたが相手を受け入れれば、相手もあなたを受け入れてくれるのだ。

◇効果をもたらす4話法 顧客の拒否反応に対処

 まずは相手を受け入れる。相手の話をよく聞く。相手の拒否を怖がらない。ここまでマスターできたら、実戦で使える話法も身につけよう。

【話法1 イエス・バット法】 営業をしていると、数々の拒否にあう。その時どうするか。「いえ、お客さま、それは違います」と言って、滔々(とうとう)と自説をひけらかす。これは最低の対処法だ。
そうではなくて、お客さまの主張を一度肯定しておいてから、次に自分の主張をやんわり述べる。それも、自分の説としてではなくこんな考え方もあるようですね」とぼかすのも方法だ。

【話法2 先回り法】 予想される顧客の不安や疑問を敏感に察知し、こちらから問題点の解消策を提案していく方法。数多くの顧客と話をすれば、顧客が共通して抱く不安や疑問が明解になってくる。解消策をさりげなく会話に挟み込み、顧客の不安を取り除く方法である。

【話法3 実例法】 顧客の断りに対し、同じような立場の人の実例を引用し、相手に安心感を与え、信頼性を高める方法だ。

【話法4 否定法】 局面によっては、話の主導権を取り戻す必要がある。そのような時に採用したい話法だ。しかし、かなり毒も強く、話が決裂する危険性を持っている。よほどのことがない限り、使いたくはない話法である。

◇次の訪問につなぐ 身だしなみも基本マナー

 その他の心得を紹介しておこう。

顧客情報を収集する

 アポイントが取れたら、直ちに情報収集にあたる。顧客との会話の中に「お宅さまの、これまでの実績を考えますと・・・」などの文言を挟み込むと、「この人間、ウチのことをよく調べているな」と、好意を持ってもらえることもある。

初回訪問にすぐお礼

 いちばん良い方法は、初回訪問のお礼を表すことである。
 私の経験だが、仕事の打ち合わせで、ある生保会社のトップのセールスレディに会ったことがある。驚いたことに、事務所に戻ってパソコンを開いたら、もうお礼のメールが届いていたのだ。
ここまでしなくても、訪問先には必ずお礼の葉書やメールを送りたい。これだけのことで意外に好印象を獲得できるのだ。にもかかわらず、こんな些細なことを省いているパーソンが多いように思う。

1日に2度鏡を見る

 若い人は、2度と言わず3度も4度も見ているかもしれないが、年配者は服装、身だしなみに無頓着である。だが、営業に携わる以上は、みぎれいであることは基本中の基本だ。〝隗から始めよ〟を座右の銘にしたい。