「7月5日に大津波が来る」。巷(ちまた)でこんな噂が広がっていた。これは漫画家が2011年3月11日の東日本大震災を漫画の中で言い当てていたとされるのが発端で、作者は英ダイアナ妃の事故死、ミュージシャンのフレディー・マーキュリーの死も予知夢で見たとされる。7月5日説が注目を浴び、作者は夢を見た日で〝審判の日〟を指しているわけではない、としてマスコミに応じている。
▼気象庁は「これはデマ」として平静を呼びかけた。ただ、単にデマと片付けてよいのか。トカラ列島で発生している群発地震。漫画家が予言していたエリアと重なる。作者は愉快犯ではないようだ。気象庁や地震研究者は、起こった地震のメカニズムを後付けで得意気に説明するにすぎない。少なくとも今回は国民に有事の備えの重要性を喚起させることにはつながった。ネット上で人を中傷したり、政治活動で偽情報を流して有権者を誘導するような類とは違って漫画家をデマ呼ばわりする前に言葉を慎重に選ぶべきではなかったか。
▼言葉は大事だ。7月20日に参議院選挙が投開票される。自民党の鶴保参院議員が「運のいいことに能登で地震があった」と発言して陳謝。二地域居住を話す中で、輪島から金沢に避難している人が住民票をとれることを例に挙げた流れの発言だが、被災地の人を不愉快にさせるとの想像が働かない政治家に危機を想定できるとは思えない。