年金不安・相続税改正に対応 資産として再発見! マイホーム活用術

資産として再発見! マイホーム活用術(1) 年金減・増税の今こそ「財産としての自宅」に注目を!

このことは切実な老後の生活問題を浮き上がらせることになりました。“老後”が迫っている生活者にとって、年金減少、増税のもたらす生活への強いインパクトが予想されるからです。老人ホーム等にお世話になったり、病気に対応したりするための資金問題など、いろいろ考えるべきことは少なくありません。

そこで注目されるのが財産としての“自宅”です。個人資産に占める自宅の金銭的な価値が大きいだけに活用しない手はないと思うのです。しかし現実はどうでしょうか。たとえば大きな邸宅に住んでいるけれども、実は3部屋程度で足りてしまう小ぢんまりとした老後の生活を送っている人がいます。話を聞くと「掃除も大変だし、なんだかもったいないと思うことがある」そうです。大きな“自宅”が生活の規模とミスマッチをおこしているのです。

介護の問題も“自宅”をどうするかという問題と切り離すことができません。自宅での介護が困難なら、それなりの施設への移転が必要になります。このとき自宅が空き家になります。空き家では、近所に迷惑、防犯上問題です。固定資産税なども負担したまま、介護費用も増えます。このため一例として自宅を「定期借家契約」で賃貸するといった“自宅”を働かせる方法を模索することになるでしょう。

また相続の場面では、平成22年度に行われた「小規模宅地の特例の改正」の影響は無視できません。とりわけ、都心、都内、その周辺で地価の高い地域の「居住用宅地」を直撃しています。現実的に同居していない相続人である子供が地価の高い自宅を無事に相続することを難しくしています。まさにこの改正は、漫然と相続を迎えるとせっかくの財産である“自宅”の「お取りつぶし」をもたらすのです。

どう対応するか…

これから始まる連載は、そうした“自宅”の現実を踏まえて、財産としての“自宅”を活用する方法について、考えるヒントを提供するものです。具体的には“自宅”を現状のまま保有し続けるか、賃貸に出すか、売却して資産を組み替えるか、その選択が迫られる場面ごとに税金の問題やお金の問題をまとめました。当然に財産としての“自宅”の相続のことも視野に入れて考えています。

長年暮らした自宅には愛着があります。思い出もあります。財産としてだけ見ることに抵抗を感じる人もいるでしょう。

しかし、自宅を上手に活用すれば、豊かな生活を手に入れることもできるのです。自宅について考えることは、家族の生活設計、相続問題の見直しをする機会でもあります。この新連載企画が、柔軟な自宅活用の参考になれば幸いです。

税理士 本郷 尚 (ほんごう たかし) http://www.tactnet.com/

税理士法人タクトコンサルティング 代表社員
株式会社タクトコンサルティング  会長

昭和48年 税理士登録
昭和50年 本郷会計事務所開業
昭和58年 株式会社タクトコンサルティング設立
平成15年 税理士法人タクトコンサルティング設立
平成24年  株式会社タクトコンサルティング 代表取締役を退任し、会長に就任

不動産活用・相続・贈与・譲渡など資産税に特化したコンサルティングを展開。
資産税を軸足とした税理士として、執筆、講演に注力。


【主な著書】
「継ぐ」より「分ける」相続―45歳を過ぎたら“相続適齢期”(タクトコンサルティング)
心をつかめ!コンサルタント(住宅新報社)
ほんもののコンサルタントになる本―プロは勝ちより価値にこだわる (能力開発シリーズ)(住宅新報社)
がんばれ大家さん!(タクトコンサルティング)
生前相続―発想を変えれば人生が変わる(文芸社)
女の相続―Six stories(文芸社)
改訂とっておきの相続(タクトコンサルティング)
不動産M&A入門 (図解不動産業)(住宅新報社)