民営化された日本郵政がCRE(企業不動産)戦略を積極化する。グループの郵便局会社などが所有する中央郵便局、社宅(郵政宿舎)、職員訓練所などを有効活用していく。不動産事業で当面の収益源を確保する狙いもある。対象不動産は約2兆7,000億円。
東京、大阪、名古屋の中央郵便局をオフィスビルに建て替え、収益物件化していく計画は既に最終段階を迎えている。今後はこれに加え、郵便局や物流センター、社宅の再配置などによって生み出される土地を活用したマンション分譲事業にも力を入れる。
マンション用地となりやすい社宅は全国に約2,500あり、東京の千代田、中央、港の都心3区だけでも約30カ所を保有する。敷地規模は様々だが、千代田区の富士見、九段などの大型案件に注目が集まる。これらの土地ではマンション分譲事業を共同で行うディベロッパーを個別にコンペ形式で募集する。
候補地は全国で既に100件を超している模様で、来年からは年に数棟のペースで開発していく。マンション事業のノウハウを蓄積しながら、将来的には「日本郵政ならではのマンション開発といわれるものをめざしたい」(齋藤隆司・日本郵政CRE部門不動産企画部担当部長)としている。
ただ、分譲マンション市況は不透明感が増していることから、高齢者向けなど新たな市場創出や、賃貸マンションなども視野に入れている。
【今週の視点】
かつての小泉改革で実現した郵政民営化。とうとう不動産部門でも大きな動きが始まった。民営化法案の段階で、日本郵政の不動産事業の参入について、自社保有の不動産に限った事業展開に限定するよう不動産業界団体が申し入れを行っている。
郵便局のネットワークを活用すれば、あっという間に大手と肩を並べる不動産デベロッパーの大組織が登場することになるからだ。日本郵政の今後の展開に注目したい。