社説「住宅新報の提言」

一人暮らしを減らす社会の構築を

■親子同居のすすめ

 100歳を超える高齢者の所在不明が大きな社会問題となっている。我が国では、1人暮らしの高齢者が増加しており、100歳を超えていなくても所在不明者の数は拡大しそうだ。地域コミュニティが希薄になっている現在、地方自治体だけの問題とするのではなく、親子・兄弟といった家族の在り方が改めて問われている。

■住宅需要は減らない

 平成21(09)年国民生活基礎調査によると、一人暮らしの単独世帯は1196万で、全世帯の4分の1を占めている。しかも65歳以上の単独世帯は463万にも達している。将来予測では、これが更に拡大する。しかしながら人口減少と世界に類のない高齢化社会を迎え、財政困窮下では一人暮らしを支える基盤は脆弱(ぜいじゃく)で、介護保険制度への過度な期待もできない。
 二世帯住宅の新築には地方自治体によって、ほんのわずか助成金が出るが、とても推進力になっていない。ならば、国の政策としても親子同居を推進してはどうか。更に同居して在宅介護に携わっていれば、相続税を一定額免除するなど税制面でインセンティブを与えるのもいい。
 確かに、子供が独立することは、新たな住宅需要になっていた。だから親子が同居をすれば、空き家が多い中で、更に家が余るという見方がある。しかし、それほどの危惧にはならないだろう。住宅・不動産業界はそれほど狭量でもないし、もっと冷静だからだ。二世帯、三世代同居となれば、それなりのあつらえが必要であるし、新築需要だけでなく、リフォーム需要もある。同居によって需要が減るとは考えていない。
 平成20(08)年住生活総合調査を見ると、高齢期における住まい方の意向は、子と同居する意向がある世帯が前年の14・9%から、17・1%へとわずかながら増えているのだ。背景には長引く不況といった経済環境が無視できず、夫婦共働きによって少しでも家計を助けると共に、三世代同居によって孫の世話もしてもらいたいという思いがにじみ出ている。

■問われる住まい方

 三世帯同居が孫の教育にもいいという考えが見直されてきていることから、住宅メーカーの中には「孫共育」をキーワードにしている企業もあるほどだ。親世代が持っている知恵や文化も身近にできる。電話やテレビ、更にはパソコンなどがパーソナルになった今、同居は自由度が低く、プライバシーもないといったマイナス面はやや後退している。
 戦後、核家族化が進み、価値観も多様化し、子供が一定年齢に達したら親元を離れて別居することは当たり前になった。いつまでも同居することの方がパラサイトシングルと言われ、やや批判的だ。親も子供を別居させることが自立と思っている向きもある。封建的な家制度の復権を望んでいないのは言うまでもない。
 住まいとは何か。家族とは何か。座視しなければいけないのは、共に暮らす日々の息づかいの中に、別居では見えなかった発見を体感できることそのものだ。そこに共助の知恵が求められる。