少し足りないぐらいがちょうどよく、余裕ある人員は人の成長機会を奪っている――。1万人の人員削減の記者会見で、パナソニックホールディングスがそう返答した。最近は〝静かな退職〟がブームのよう。怠慢に最低限の業務だけをこなし、企業の成長を阻害する〝がん細胞〟が増殖している。
▼ろくに働かない人に給与を払うために、無駄に気遣い真面目に働く人だけが犠牲を払い稼がなければならない状況は、悲劇を越える。企業は強制労働ではない。働きたくなければ、辞めればいい。自分は優秀だから〝やればできる〟と「ダニングクルーガー効果」(優越の錯覚)に陥る人ほど、「何かになろうという人はなく、何かになったつもりでいる」(ゲーテ)。
▼「退職代行サービス」も流行っているという。いわゆる〝ブラック企業〟ならば、あらゆる手段で即刻退職すべき。一方で〝ホワイト企業〟でも、楽過ぎて注意もされずに〝他力本願〟ゆえに、今後の自身の成長が不安となり、退職する人が多いとか。就職氷河期世代から見ると、贅沢な話である。
▼水戸藩の長久保赤水は、貧しい農民の出ながら、初の作成者で知られる伊能忠敬よりも40年も前に、実測ではなく伝聞の方法だが、日本地図「赤水図」を作成した。現代で有名にはならずとも、明治時代までは広く使われたという。人は、何のために働いているのか。それは、利己ではなく「利他の本質」を考えることにある。