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大言小語 〝漫画の力〟に期待

 築86年を迎える建物の老朽化対応のため、2月13日から全館休業に入った山の上ホテル(東京都千代田区)に続き、国の登録有形文化財の学士会館も、隣地との共同再開発のため、年内で営業を終了する。1928年に開業した、関東大震災後の「震災復興建築」だった旧館は、道路の拡張に伴い曳家保存し、耐震補強し全館改修するが、37年に増築した新館は解体し、ファザード保存の予定もないという。

 ▼一方で、3月1日には、東京都世田谷区に所在する築136年の洋館「旧尾崎テオドラ邸」がギャラリーやカフェ、レンタルスペースとしてオープンする。日本の昔話の英訳を手掛け、後に「憲政の神様」として知られる尾崎行雄の妻となった尾崎テオドラ英子ゆかりの建物で、英文学者に譲渡され解体・移築を経て残っていたが、19年に解体する計画が持ち上がり、漫画家の山下和美さんらが保存活動に尽力。社団法人を設立し、物件を取得。再生に至った。

 ▼建築資材不足や物価高騰の中、数人の漫画家たちによる無利子融資が膨大な補修費用の支えになったという。オープニングに開催されるチャリティ作品展を始め、今後はギャラリーやサイトでの漫画家の原画販売などが、資金の返済や運営・保全を支える模様だ。痛ましいニュースもあったが、やはり漫画には、人を呼び寄せる場を創る力があるのではないかと思う。ぜひ、新たな名所になってほしい。