政策

社説 空き家を生まない対策を 多様な居住形態視野に

 空き家対策には空き家の発生を前提とした対症療法ではなく、住宅の供給時から将来空き家にさせない手法を導入することが有効であり、そうした手法を研究・検討し推進する責務は不動産業界にある。ここでは検討に値する有力な三つの手法を取り上げる。なお、ここで前提にしているのは個人の持ち家で利用方針が定まっていない戸建ての空き家である。

 一つは定期借地権の活用である。期間50年以上の一般定期借地権住宅は期間が満了すると建物を解体して更地返還するか、地主に無償譲渡するかのどちらかであるから原理的に空き家が発生しない。そこで、例えば子育て世帯が望むような緑豊かな住宅地に広い庭付き戸建て住宅を定期借地権で供給する。子供との同居期間が25年~30年とすれば、子育てを終えた夫婦はその時点で建物を次の子育て世帯に譲渡するか賃貸し、自分たちはその時点でふさわしい住まい方を新たに選ぶ。おそらくその頃には普及している3Dプリンター住宅を理想の土地に建設して住むこともできるし、あるいは夫婦どちらかの故郷に移住するなど様々な選択肢があるはずである。

 二つ目は今急拡大している〝自宅リースバック〟において元の所有者(老夫婦)と結ぶ賃貸借契約を「終身借家権」にする制度を普及させることである。現在採用されている賃貸借契約の形態は8割が定期借家権で、普通借家権はわずか2割、終身借家権はほぼゼロといわれている。しかし、これでは老夫婦が安心してリースバック契約を結ぶことができない。終身借家権は借家人が死亡したときに借家契約が終了する契約で、借家人と同居していた配偶者も1カ月以内に継続居住を申し出れば終身居住し続けることができる画期的制度である。リースバックが健全に普及すれば当然空き家化を防ぐことができる。

 三つ目は、若者、母子世帯、子育て中のファミリー、高齢者世帯などが一つ屋根の下で助け合いながら暮らす「多世代共生型シェアハウス」である。現在は単身者向けのシェアハウスが主流だが、超高齢化や単身世帯が増える日本社会にあって、多世代が同居する居住形態は重要な社会インフラになる可能性があるため、国交省も推奨している。

 実は日本で空き家が増加している根本原因は〝核家族〟という社会構造にある。核家族社会では子供は独立と同時に親元から離れて別世帯を設けるため、実家はいずれ空き家となる運命にある。

 経済も人口構成も成熟国家となった今、日本は社会工学的に国家のありようを見つめなおすときである。国は自治体の条例による「空き家税」の創設を認めたが、今後の急激な人口減少を踏まえれば都市計画法上の住宅建設規制を強化し、成熟国家にふさわしい豊かな住環境づくりをめざすことにも意を注ぐべきである。